急性脳梗塞の血管内治療は日常診療でも有効か/BMJ

提供元:ケアネット

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公開日:2018/03/26

 

 急性虚血性脳卒中の血管内治療は、無作為化対照比較試験の結果と同様に、ルーチンの臨床診療でも有効かつ安全であることが、オランダ・アムステルダム大学学術医療センターのIvo G. H. Jansen氏らの検討で明らかとなった。研究の成果は、BMJ誌2018年3月9日号に掲載された。前方循環系の頭蓋内血管近位部閉塞による急性虚血性脳卒中では、症状発現後6時間以内の血管内治療の有効性と安全性が無作為化試験やメタ解析で示されているが、ルーチンの臨床診療でも既報の無作為化臨床試験と同等の有用性が得られるかは不明であった。

MR CLEANレジストリをMR CLEAN試験の結果と比較
 研究グループは、オランダの16施設が参加・進行中の前向きコホート研究「MR CLEANレジストリ」の患者データを解析し、無作為化対照比較試験「MR CLEAN試験」の既報の結果と比較した(エラスムス大学医療センターなどの助成による)。

 2014年3月~2016年6月の期間にMR CLEANレジストリに登録された急性虚血性脳卒中で、症状発現後6.5時間以内に血管内治療(ステント型血栓回収デバイス、血栓吸引デバイスなど)を受けた患者1,488例を解析の対象とした。

 主要アウトカムは、症状発現後90日時の修正Rankin Scale(mRS、0[無症状]~6[死亡]点)のスコアによる機能障害とした。副次アウトカムには、90日時の機能アウトカムがexcellent(mRSスコア:0~1)、同good(0~2)、同favourable(0~3)の患者などが含まれた。

臨床試験の介入群よりも機能アウトカムが良好
 ベースラインの年齢中央値は、MR CLEANレジストリが71歳(IQR:60~80)、MR CLEAN試験の介入群(233例)が66歳(55~76)、同対照群(267例)は66歳(56~76)であり、男性はそれぞれ53.3%、57.9%、58.8%であった。NIHSSスコア中央値はそれぞれ16点、17点、18点であり、rt-PA(アルテプラーゼ)静注療法は78.0%、87.1%、90.6%に行われていた。

 90日時のmRSスコア中央値は、MR CLEANレジストリが3点(IQR:2~6)、CLEAN試験の介入群が3点(2~5)、同対照群が4点(3~5)であり、MR CLEANレジストリの機能アウトカムは、MR CLEAN試験の介入群(補正共通オッズ比:1.30、95%信頼区間[CI]:1.02~1.67、p=0.03)および同対照群(1.85、1.64~2.34、p<0.01)と比較して、いずれも有意に改善した。

 90日時の機能アウトカムがexcellentの患者の割合は、MR CLEANレジストリが18.9%、MR CLEAN試験の介入群が11.6%、同対照群は6.0%であった。また、goodの患者はそれぞれ37.9%、32.6%、19.1%であり、favourableは52.1%、51.1%、35.6%だった。

 再灌流の達成率(extended TICI gradeで2B-3の場合に再灌流成功と定義)は、MR CLEANレジストリとMR CLEAN試験の介入群がいずれも58.7%で、同対照群は該当なしであった。

 また、脳卒中発症から、血管内治療開始までの期間中央値(MR CLEANレジストリ:208分[IQR:160~265]、MR CLEAN試験の介入群:260分[210~313])と、再灌流成功または最後の造影剤ボーラス注入までの期間中央値(267分[217~331]、339分[274~395])は、いずれもMR CLEANレジストリが約1時間短かった。

 一方、症候性頭蓋内出血の発症率は、MR CLEANレジストリが5.8%と、MR CLEAN試験の介入群の7.7%、同対照群の6.4%に比べて低かった。

 著者は、「この知見は、血管内治療が前方循環系の頭蓋内血管近位部閉塞による急性虚血性脳卒中の標準治療であることを裏付ける」としている。

(医学ライター 菅野 守)