動脈管開存症(PDA)の早産児への薬物療法による動脈管閉鎖の効果では、高用量の経口イブプロフェンが、標準用量の静脈内イブプロフェンや静脈内インドメタシンに比べて良好であることが、カナダ・ダルハウジー大学のSouvik Mitra氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌2018年3月27日号に掲載された。早産児のPDAでは保存的管理が重視されるようになっているが、血行動態的に重要なPDAを発症した患児への薬物療法による介入では、さまざまな治療法が行われているという。
一般的な薬剤の効果をネットワークメタ解析で評価
研究グループは、血行動態的に重要なPDAを発症した早産児において、一般的に使用されている薬剤を用いた介入による、動脈管閉鎖の相対的な可能性を評価し、有害事象の発現率を比較するために、文献を系統的にレビューし、メタ解析を行った。
2015年8月15日までに3つの医学データベースに登録された文献を検索し、2017年12月31日にアップデートを行うとともに、2017年12月までに発行された学会プロシーディングを調べた。心エコー検査で臨床的に、血行動態的に重要なPDAと診断された在胎期間37週未満の早産児を対象に、静脈内または経口インドメタシン、イブプロフェン、アセトアミノフェン投与と、他の薬剤、プラセボ、無治療を比較した無作為化臨床試験を対象とした。
6人のレビュワーが2人1組で、それぞれデータの抽出を行った。ランダム効果を用いたベイジアン・ネットワークメタ解析によりデータを統合した。主要アウトカムは血行動態的に重要なPDAの閉鎖であり、副次アウトカムには外科的閉鎖、死亡、壊死性腸炎、脳室内出血などが含まれた。
死亡、壊死性腸炎、脳室内出血は、プラセボや無治療と差がない
68件の無作為化試験に参加した4,802例の患児が、解析の対象となった。これらの論文は1980~2017年に発表され、インドメタシン、イブプロフェン、アセトアミノフェンは、投与経路、用量、期間、投与法の違いによる14種類の方法で使用されていた。67.4%(2,867/4,256例)で、治療によりPDAが閉鎖し、そのうち38%はプラセボ群または無治療群だった。
PDA閉鎖のオッズは、高用量経口イブプロフェンが、標準用量静脈内イブプロフェン(オッズ比[OR]:3.59、95%確信区間[CrI]:1.64~8.17、絶対リスク差:199/1,000例以上、95%CrI:95~258)および標準用量静脈内インドメタシン(2.35、1.08~5.31、124/1,000例以上、14~188)に比べ有意に高かった。
順位統計値に基づくと、高用量経口イブプロフェンはPDA閉鎖に関する最も優れた薬物療法の選択肢であり(SUCRA曲線:0.89[SD 0.12])、外科的PDA結紮(SUCRA曲線:0.98[SD 0.08])の低減にも有用と考えられた。
死亡、壊死性腸炎、脳室内出血のオッズは、プラセボおよび無治療が、これ以外の治療法と比較して有意な差を認めなかった。
著者は、「高用量および標準用量の経口イブプロフェンと、経口アセトアミノフェンは、全体としてアウトカム全般が高順位であることから、現在使用されている静脈内イブプロフェンや静脈内インドメタシンの標準的なレジメンに代わる有効な治療法となる可能性がある」とし、「このネットワークメタ解析の結果の妥当性を確証または反証するには、これらの薬剤の有効性と安全性に関して、臨床的に重要な差の検出に十分なサンプルサイズを有し、適切にデザインされた無作為化臨床試験が求められる」と指摘している。
(医学ライター 菅野 守)