下腿潰瘍、表在静脈逆流への早期焼灼術で迅速な治癒/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2018/05/14

 

 静脈疾患は、下腿の潰瘍形成の最も一般的な原因である。英国・ケンブリッジ大学病院のManjit S. Gohel氏らは、表在静脈逆流への早期の静脈内焼灼術は待機的な静脈内焼灼術に比べ、静脈性下腿潰瘍の治癒を迅速化し、潰瘍のない期間を延長することを示した(EVRA試験)。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2018年4月24日号に掲載された。圧迫療法は、静脈性潰瘍の治癒を改善するものの、静脈高血圧の根本原因を治療するものではない。表在静脈逆流の治療は潰瘍の再発率を低下させるが、表在静脈逆流への早期静脈内焼灼術が、潰瘍の治癒に及ぼす効果は明らかにされていない。

早期静脈内治療の役割を評価
 EVRA試験は、静脈性下腿潰瘍患者への圧迫療法の補助療法としての、表在静脈逆流への早期静脈内治療の役割を評価する多施設共同無作為化対照比較試験である(英国国立健康研究所[NIHR]医療技術評価プログラムの助成による)。

 2013年10月~2016年9月の期間に、英国の20施設に450例の静脈性下腿潰瘍患者が登録された。参加者は、圧迫療法を受け、無作為割り付け後2週間以内に表在静脈逆流への早期静脈内焼灼術を受ける群(早期介入群:224例)、または圧迫療法を受け、潰瘍が治癒後あるいは治癒しない場合は無作為化割り付け後6ヵ月時に、待機的に静脈内焼灼術を考慮する群(待機的介入群:226例)に割り付けられた。

 主要アウトカムは、潰瘍が治癒するまでの期間とした。副次アウトカムは、24週時の潰瘍治癒率、1年時の潰瘍再発率および潰瘍がない期間の長さ(無潰瘍期間)、患者報告による健康関連QOLであった。

潰瘍治癒までの期間:56日 vs.82日、無潰瘍期間:306日 vs.278日
 ベースラインの平均年齢は、早期介入群が67.0±15.5歳、待機的介入群は68.9±14.0歳で、女性はそれぞれ43.3%、46.9%であった。静脈性下腿潰瘍の治癒に影響を及ぼすと考えられる潰瘍の持続期間や大きさ、深部静脈血栓症の既往歴は両群でほぼ同様だった。

 早期介入群は、待機的介入群に比べ潰瘍治癒までの期間が短く、潰瘍治癒を達成した患者が多かった(潰瘍治癒のハザード比[HR]:1.38、95%信頼区間[CI]:1.13~1.68、p=0.001)。潰瘍治癒までの期間中央値は、早期介入群が56日(95%CI:49~66)、待機的介入群は82日(69~92)だった。

 24週時の潰瘍治癒率は、早期介入群が85.6%、待機的介入群は76.3%であった。事後解析における12週時の潰瘍治癒率は、それぞれ63.5%、51.6%であった。また、全体の1年以内の潰瘍治癒率は89.7%(404/450例)で、早期介入群は93.8%(210/224例)、待機的介入群は85.8%(194/226例)であり、群間差は8.0ポイント(95%CI:2.3~13.5)だった。

 1年以内に潰瘍治癒を達成した404例のうち、フォローアップ期間終了前に再発した患者の割合は、早期介入群が11.4%(24/210例)、待機的介入群は16.5%(32/194例)であった(再発率の群間差:0.08イベント/人年、95%CI:-0.02~0.18)。また、1年時の無潰瘍期間中央値は、306日(IQR:240~328)、278日(175~324)だった(p=0.002)。

 疾患特異的QOLを評価するAberdeen Varicose Vein Questionnaireのスコアでは、明確な差はないものの、全般に早期介入群で低く、良好な傾向がみられた。EQ-5D-5Lにも、明らかな差は認めなかった。また、静脈内焼灼術の手技に関連する最も頻度の高い合併症は、疼痛および深部静脈血栓症であった。

 著者は、「静脈内治療を早期に行えば、潰瘍がより迅速に治癒することが示された」とまとめ、「このベネフィットは、質の高い圧迫療法の有無にかかわらず観察され、これは両群とも治癒率が良好であったことの説明となる可能性がある。また、有効性が高い圧迫療法は無作為化試験以外では一般的ではないと考えられ、リアルワールドでは治癒までにもっと長い期間を要する。したがって、早期静脈内治療による潰瘍治癒の改善効果は、実臨床のほうが本試験よりも高い可能性がある」と考察を加えている。

(医学ライター 菅野 守)