TIA/脳梗塞患者、長期の心血管リスクは?/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2018/05/28

 

 一過性脳虚血発作(TIA)および軽度虚血性脳卒中を発症後の心血管イベントの長期的なリスクは知られていない。フランス・パリ第7大学のPierre Amarenco氏らは、21ヵ国のレジストリデータを解析し、TIA/軽度虚血性脳卒中の発症から1年後の心血管イベントのリスクが、5年後も持続していることを示した。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2018年5月16日号に掲載された。脳卒中後の新たなイベントのリスクは、発症後10日間は増大し、その後は発症後1年まで比較的安定するとされるが、1年以降の脳卒中のリスクを評価した研究は少なく、再発リスクを検討した試験の多くは単施設で行われたものだという。

5年フォローアップした3,847例のデータを解析
 本研究(TIAregistry.orgプロジェクト)では、2009~11年にTIAおよび軽度虚血性脳卒中患者4,789例を登録した21ヵ国のレジストリデータを解析し、2016年に1年時のアウトカムの結果を報告しており、今回は5年時の長期的なアウトカムの報告が行われた(AstraZeneca社など3社の助成による)。

 レジストリへの登録前7日以内にTIA/軽度虚血性脳卒中を発症した患者を対象とした。1年時のアウトカム研究に参加した61施設のうち、5年時に登録患者の50%以上のフォローアップデータを有していた42施設を選出した。

 主要アウトカムは、非致死的脳卒中、非致死的急性冠症候群、心血管死のうち最初に発生したイベントの複合であった。

 5年フォローアップには3,847例(80.3%)が含まれた。各施設の5年フォローアップ患者の割合の中央値は92.3%(IQR:83.4~97.8)だった。

心血管イベント発生率、1年時が6.4%、2〜5年時も6.4%
 対象の平均年齢は66.4±13.2歳で、59.8%が男性であった。1年コホートのうち5年解析に含まれなかった患者は、5年解析に含まれた患者に比べ、高血圧、脂質異常症、喫煙者が少なく、修正Rankinスケール、NIH脳卒中スケール、ABCD2のスコアが低かった。

 5年時の主要アウトカムのイベント発生は469例(心血管死:96例、非致死的脳卒中:297例、非致死的急性冠症候群:76例)に認められ、推定累積イベント発生率は12.9%(95%信頼区間[CI]:11.8~14.1)であった。このうち、235例(50.1%)は2~5年の期間に発症した。絶対イベント発生率は、1年時が6.4%であり、2~5年の期間でも6.4%だった。

 5年時までに、脳卒中は345例が発症し、推定累積イベント発生率は9.5%(95%CI:8.5~10.5)であった。このうち、149例(43.2%)が2~5年の期間に発症した。心筋梗塞は、5年時までに39例が発症した。

 全死因死亡は373例(推定5年累積イベント発生率:10.6%)、心血管死は96例(2.7%)、脳卒中またはTIAの再発は621例(16.8%)、急性冠症候群は84例(2.4%)に認められ、大出血は53例(1.5%)、頭蓋内出血は39例(1.1%)にみられた。

 多変量解析では、同側大動脈のアテローム性動脈硬化(p=0.001)、心原性脳塞栓症(p=0.007)、ベースラインのABCD2スコア(0~7点、点数が高いほど脳卒中のリスクが高い)≧4点(4〜5点:p=0.01、6〜7点:p=0.04)が、2~5年の期間の脳卒中再発リスクの独立した予測因子であったが、神経画像上の脳病変はリスクの上昇とは関連しなかった。
 著者は、「TIAおよび軽度虚血性脳卒中の患者では、心血管イベントのリスクが5年にわたり持続しており、イベントの半数は2〜5年の期間に発生していた」とまとめ、「継続的な2次予防策が、脳卒中の再発を抑制する可能性がある」と指摘している。

(医学ライター 菅野 守)

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コメンテーター : 内山 真一郎( うちやま しんいちろう ) 氏

国際医療福祉大学臨床医学研究センター教授

赤坂山王メディカルセンター脳神経内科部長

J-CLEAR評議員