結核を発症させやすく、世界的な感染症による死亡の主因となっている近年の結核菌(Mycobacterium tuberculosis)に対する、開発中のワクチン「H4:IC31」の第II相試験の結果が発表された。南アフリカ共和国結核ワクチンイニシアチブ(SATVI)のElisa Nemes氏らによる検討で、伝播率の高い環境においてワクチン接種の効果を示す所見が得られたという。著者は「今回の結果は、新規ワクチン候補の臨床的開発を示すものといえるだろう」と述べている。H4:IC31はサブユニットワクチンの候補で、前臨床モデルでは結核発症への防御効果が示された。また観察研究において、カルメット-ゲラン菌(BCG)の初回ワクチン接種が、結核感染への部分的防御効果がある可能性が示唆されていた。NEJM誌2018年7月12日号掲載の報告。
H4:IC31ワクチン vs.BCGワクチン再接種 vs.プラセボ
第II相試験は、新生児期にBCGワクチン接種を受けていた高リスク環境にある青少年990例を対象に行われた。被験者をH4:IC31ワクチン接種群、BCGワクチン再接種群、プラセボ接種群に無作為に割り付けて追跡評価した。なお被験者は全員、QuantiFERON-TB Gold In-tubeアッセイ(QFT)での結核菌感染検査、およびヒト免疫不全ウイルス検査の結果が陰性であった。
主要アウトカムは、ワクチン接種の安全性と、結核菌感染(6ヵ月ごと2年の間に行ったQFT検査での初回陽転で定義)とした。副次アウトカムは、免疫原性、QFT持続陽転(陰転を伴うことなく陽転後3、6ヵ月時の検査で陽転を確認)とした。ワクチンの有効性は、Cox回帰モデルからのハザード比(HR)に基づき推算し、各ワクチンについてプラセボと比較した。
BCG、H4:IC31接種群はいずれも免疫原性を示す
BCGワクチン再接種群、H4:IC31ワクチン接種群はいずれも免疫原性が認められた。QFT陽転は、H4:IC31群44/308例(14.3%)、BCG群41/312例(13.1%)、プラセボ群49/310例(15.8%)であった。陽転持続の割合は、それぞれ8.1%、6.7%、11.6%。
H4:IC31群、BCG群はいずれも初回陽転を防御できず、有効性推定値は、それぞれ9.4%(p=0.63)、20.1%(p=0.29)であった。BCGワクチンではQFT陽転持続率を低下したことが認められ、有効性は45.4%であった(p=0.03)。一方、H4:IC31の有効性は30.5%であった(p=0.16)。
重篤有害事象の発現頻度は、群間で臨床的有意差がみられなかったが、軽度~中等度の注射部位反応は、BCGワクチン再接種群で最も頻度が高かった。
(ケアネット)