Na摂取量1日5g超で、CVイベントと関連?/Lancet

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2018/08/23

 

 カナダ・マックマスター大学のAndrew Mente氏らが、21ヵ国を対象にした大規模疫学コホート試験「Prospective Urban Rural Epidemiology(PURE)試験」を基に分析した結果、ナトリウム摂取量の増加は、摂取量が5g超/日の地域においてのみ、心血管疾患や脳卒中と関連があることが明らかにされた。一方、WHOでは、心血管疾患の予防手段として、2g未満/日のナトリウム摂取を推奨しているが、この目標値を達成している国はない。今回の結果を踏まえて著者は、「ナトリウム摂取減の戦略は、これら摂取量が5g超/日の地域においてのみ必要かもしれない」と述べている。Lancet誌2018年8月11日号掲載の報告。

臨床アウトカムデータのある18ヵ国を対象に調査

 研究グループは、進行中のPURE試験に参加する21ヵ国のうち、臨床アウトカムデータを得られた18ヵ国について分析を行った。被験者は、一般人口集団から心血管疾患歴のない35~70歳を適格とした。

 空腹時早朝尿を基に、24時間ナトリウム・カリウム排泄量を予測し、それぞれ摂取量の代用指標とした。被験者数50例超の369地域(総被験者数9万5,767例)では、地域ベースでナトリウム・カリウム摂取量と血圧値の関連を、また被験者数100例超の255地域(同8万2,544例)では、地域ベースでナトリウム・カリウム摂取量と心血管疾患および死亡率の関連を検証した。個人データを用いて、既知の交絡因子については補正を行った。

中国のナトリウム摂取量1g増大で脳卒中リスク0.42/1,000年増加

 追跡期間の中央値は8.1年だった。中国では103地域のうち82地域(80%)で平均ナトリウム摂取量が5g超/日と高かったが、それ以外の国では266地域のうち224地域(84%)で平均ナトリウム摂取量は3~5g/日だった。

 全体で、平均ナトリウム摂取量の1g増大は平均収縮期血圧値2.86mmHg上昇と関連していたが、その明らかな関連は、ナトリウム摂取量の最高三分位の地域でのみ認められた(異質性p<0.0001)。

 平均ナトリウム摂取量と主要心血管イベントの関連については、直線性の有意な偏差が認められた(p=0.043)。摂取量が4.43g未満/日の最低三分位の地域(平均ナトリウム摂取量:4.04g/日、範囲:3.42~4.43)では、有意な逆相関の関連が認められた(平均ナトリウム摂取量1g増大によるイベント減少:-1.00/1,000年、95%信頼区間[CI]:-2.00~-0.01、p=0.0497)。摂取量が4.43~5.08g/日の中程度の地域(同4.70g/日、4.44~5.05)では、関連性は認められなかった(同イベント変化:0.24/1,000年、-2.12~2.61、p=0.8391)。5.08g超/日と最高三分位の地域(同5.75g/日、5.08超~7.49)では、非有意な正の関連があった(同イベント変化:0.37/1,000年、-0.03~0.78、p=0.0712)。

 中国(平均ナトリウム摂取量5.58g/日)では、その他の国(同4.49g/日)と比べて脳卒中との強い関連がみられた。中国では、平均ナトリウム摂取量1g増大による0.42/1,000年(95%CI:0.16~0.67、p=0.0020)のイベント増加がみられたが、他国では同イベントの減少(-0.26/1,000年、-0.46~-0.06、p=0.0124)がみられた(異質性のp<0.0001)。

 なお、すべての主要心血管アウトカムは、すべての国でカリウム摂取量の増加とともに減少する関連性が認められた。

(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)

専門家はこう見る

コメンテーター : 石上 友章( いしがみ ともあき ) 氏

横浜市立大学附属病院循環器内科 教授

J-CLEAR評議員