安定胸痛の患者に対し、標準治療に加えCT冠動脈造影(CTA)を行うことで、5年間の冠動脈疾患死または非致死的心筋梗塞の発生リスクは約4割低下することが示された。侵襲的冠動脈造影や冠血行再建術の5年実施率は、いずれも増加は認められなかったという。英国・エジンバラ大学のDavid E. Newby氏らによる、Scottish Computed Tomography of the Heart(SCOT-HEART)試験の結果で、NEJM誌2018年9月6日号で発表された。安定胸痛の患者への評価では、CTAにより診断の確実性が増すことが示されていたが、5年後の臨床アウトカムに及ぼす影響は不明であった。
5年冠動脈疾患死または非致死的心筋梗塞の発生を評価
SCOT-HEART試験では、安定胸痛を有し、その評価を目的に循環器診療所に紹介された18~75歳の患者4,146例を対象に、非盲検多施設共同並行群間比較試験を行った。
研究グループは被験者を無作為に2群に分け、一方の群には標準治療に加えCTAを(2,073例)、もう一方には標準治療のみを行った(2,073例)。
主要評価項目は、5年時点における冠動脈疾患死または非致死的心筋梗塞の発生だった。
予防療法・抗狭心症療法の実施率がCTA併用群で1.3~1.4倍
追跡期間中央値は4.8年、2万254患者年を追跡した。
主要評価項目の5年発生率は、標準治療群3.9%(81例)に対し、CTA群2.3%(48例)と、CTA群が有意に低かった(ハザード比[HR]:0.59、95%信頼区間[CI]:0.41~0.84、p=0.004)。
侵襲的冠動脈造影と冠血行再建術の実施率は、追跡開始当初の数ヵ月間はCTA群で標準治療群より高率だったが、5年時点では両群で同程度に認められた。侵襲的冠動脈造影の実施者は、CTA群491例、標準治療群502例(HR:1.00、95%CI:0.88~1.13)、冠血行再建術はそれぞれ279例、267例だった(同:1.07、0.91~1.27)。
一方で、予防療法や抗狭心症療法を開始した患者の割合は、CTA群が標準治療群より多かった。予防療法のオッズ比は1.40(95%CI:1.19~1.65)、抗狭心症療法は同1.27(1.05~1.54)だった。
心血管系の原因による死亡、心血管以外の原因による死亡、全死因死亡の発生率は、いずれも両群で有意差は認められなかった。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)