中国で開発、生分解性ポリマーDESの有効性は?/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2018/09/25

 

 ステント留置を要する心筋虚血患者において、中国で開発された新たな生分解性ポリマー薬剤溶出性ステント(DES)であるFIREHAWKは、標準ステントであるXIENCE(耐久性ポリマー、エベロリムス溶出)に対し、標的病変不全およびステント内晩期血管径損失が非劣性であることが、米国・イエール大学のAlexandra Lansky氏らが実施した「TARGET All Comers試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2018年9月3日号に掲載された。FIREHAWKのステントプラットフォームは、薄型ストラット・コバルトクロム合金製で、完全生分解性のポリマーから低用量のシロリムスが溶出される。ステント表面に限局性の反管腔側溝を有し、ポリマーの負荷を最小化して血管壁の薬剤濃度が低くなるようデザインされており、これによって抗再狭窄効果と血管治癒効果が最適化され、炎症反応が最小化するという。

欧州10ヵ国21施設が参加した非劣性試験
 本研究は、欧州10ヵ国21施設で行われたall-comersデザインのプロスペクティブな多施設共同非盲検無作為化非劣性試験(Shanghai Microport Medical社の助成による)。

 対象は、症候性または無症候性の冠動脈疾患で、経皮的冠動脈形成術(PCI)適用と判定された心筋虚血の客観的エビデンスを有する患者であった。被験者は、FIREHAWKまたはXIENCEを留置する群に無作為に割り付けられた。アウトカム評価者には治療割り付け情報がマスクされたが、担当医および患者にはマスクされなかった。

 主要エンドポイントは、12ヵ月時の標的病変不全(心臓死、標的血管関連心筋梗塞、虚血による標的病変再血行再建術の複合)であった。XIENCE群のイベント発生率を7%と仮定し、非劣性マージンは3.5%に設定した。また、晩期血管径損失を主要エンドポイントとして、FIREHAWKのXIENCEに対する非劣性を検証するためにデザインされた冠動脈造影によるサブスタディを行った。

MACE、ステント血栓症にも差はない
 2015年12月17日~2016年10月14日の期間に、1,653例(2,400病変)が登録され、FIREHAWK群に823例(1,221病変)が、XIENCE群には830例(1,179病変)が割り付けられた。

 ベースラインの平均年齢は、FIREHAWK群が64.9(SD 9.8)歳、XIENCE群は65.3(10.5)歳、男性がそれぞれ78.1%、76.4%であった。FIREHAWK群の65例、XIENCE群の66例が、フォローアップデータが不十分で、解析から除外された。

 12ヵ月時の標的病変不全の発生率は、FIREHAWK群が6.1%(46/758例)、XIENCE群は5.9%(45/764例)であり、FIREHAWK群のXIENCE群に対する非劣性が示されるとともに、優越性は認めなかった(差:0.2%[90%信頼区間[CI]:-1.9~2.2]、非劣性のp=0.004、[95%CI:-2.2~2.6]、優越性のp=0.88)。

 12ヵ月時の心臓死(差:0.3%、95%CI:-0.8~1.3、p=0.60)、標的血管関連心筋梗塞(0.6%、-1.5~2.6、p=0.59)、虚血による標的病変再血行再建術(-1.2%、-2.5~0.2、p=0.08)には、両群間に有意な差はみられなかった。

 12ヵ月時の主要心血管イベント(MACE:死亡、心筋梗塞、虚血による標的血管再血行再建術、差:0.8%、95%CI:-2.5~4.0、p=0.65)およびステント血栓症(definiteの差:0.0%、-1.1~1.1、p=0.99、definite/probableの差:0.0%、-1.1~1.2、p=0.99)にも、両群間に有意な差は認めなかった。

 冠動脈造影によるサブスタディには176例(238病変)が含まれた。13ヵ月時のステント内晩期血管径損失は、FIREHAWK群が0.17mm(SD 0.48)、XIENCE群は0.11mm(0.52)であり、絶対差は0.05mm(95%CI:-0.09~0.18、非劣性のp=0.024)と、FIREHAWK群のXIENCE群に対する非劣性が確認された。

 著者は、「FIREHAWKは、臨床における虚血性冠動脈疾患患者の安全で有効な治療選択肢である」としている。

(医学ライター 菅野 守)

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コメンテーター : 上田 恭敬( うえだ やすのり ) 氏

国立病院機構大阪医療センター 統括診療部長

J-CLEAR評議員