低・中所得国21ヵ国を対象とした多様な多国籍コホート研究において、乳製品の摂取が、死亡および主要心血管疾患イベントの低下と関連することが明らかにされた。カナダ・マックマスター大学のMahshid Dehghan氏らが、Lancet誌オンライン版2018年9月11日号で発表した。全脂肪乳製品は飽和脂肪の源であり、血液脂質に悪影響を与え、心血管疾患や死亡を増大すると思われているが、この懸念に関するエビデンスは弱く、また、これまで低所得国および中所得国の健康への乳製品消費の影響に関するデータはほとんど入手できていなかったという。
21ヵ国13万6,384例について関連を評価
研究グループは、乳製品全体および特定の乳製品と、死亡および重大心血管疾患との関連を調べる「Prospective Urban Rural Epidemiology(PURE)試験」を行った。試験は5大陸・21ヵ国(アルゼンチン、バングラデシュ、ブラジル、カナダ、チリ、中国、コロンビア、インド、イラン、マレーシア、パレスチナ自治区、パキスタン、フィリピン、ポーランド、南アフリカ共和国、サウジアラビア、スウェーデン、タンザニア、トルコ、アラブ首長国連邦、ジンバブエ)から35~70歳の13万6,384例が参加した大規模多国籍コホート試験であった。
参加者の乳製品摂取量を、検証済みの国別の食事摂取頻度調査票を用いて記録した。乳製品は、牛乳、ヨーグルト、チーズとし、これらを全脂肪と低脂肪の乳製品に分類した。
主要評価項目は、死亡または主要心血管疾患イベントの複合(心血管系が原因の死亡、非致死的心筋梗塞、脳卒中または心不全と定義)とした。参加者の中央クラスター形成を説明するためにランダム切片・多変量Cox frailtyモデルを用いて、ハザード比(HR)を算出して評価した。
摂取総量が多いほど複合イベント発生リスクは低い
2003年1月1日~2018年7月14日のフォローアップ9.1年間で、1万567件の複合イベントが記録された(死亡6,796件、主要心血管疾患5,855件)。
乳製品摂取総量が多いほど複合イベントの発生リスクは低かった(非摂取を参照とした場合の>2サービング[SV]/日のHR:0.84、95%信頼区間[CI]:0.75~0.94、傾向のp=0.0004)。
イベント別にみると、総死亡(0.83、0.72~0.96、傾向のp=0.0052)、非心血管死(0.86、0.72~1.02、傾向のp=0.046)、心血管死(0.77、0.58~1.01、傾向のp=0.029)、主要心血管疾患(0.78、0.67~0.90、傾向のp=0.0001)、脳卒中(0.66、0.53~0.82、傾向のp=0.0003)についてはリスクの低下がみられたが、心筋梗塞については有意な低下が観察されなかった(0.89、0.71~1.11、傾向のp=0.163)。
乳製品別にみると、牛乳(>1SV vs.非摂取のHR:0.90、95%CI:0.82~0.99、傾向のp=0.0529)およびヨーグルト(0.86、0.75~0.99、傾向のp=0.0051)は、摂取量が多いほど複合イベントの発生は低い関連が認められた。チーズについては複合イベント発生について有意な関連が認められなかった(0.88、0.76~1.02、傾向のp=0.1399)。
なお、バターの摂取量は少なく、臨床アウトカムとの有意な関連はみられなかった(HR:1.09、95%CI:0.90~1.33、傾向のp=0.4113)。
(ケアネット)