ガイドラインに基づく最大用量の薬物療法を受けているにもかかわらず症状が持続している中等症~重症の二次性僧帽弁閉鎖不全症(MR)の心不全患者において、薬物療法単独と比較し薬物療法+経皮的僧帽弁修復術を行った患者では、24ヵ月以内の心不全による入院率と全死因死亡率が低下し、デバイス関連合併症の発生率も低いことが認められた。米国・コロンビア大学のGregg W. Stone氏らが、MitraClip(Abbott Vascular)を用いた経皮的僧帽弁修復術の安全性と有効性を検証した多施設共同無作為化非盲検比較試験「COAPT」の結果を報告した。左室機能不全に起因するMRを伴う心不全患者の予後は不良であり、経皮的僧帽弁修復術はこうした心不全患者の臨床転帰を改善する可能性があった。NEJM誌オンライン版2018年9月23日号掲載の報告。
約600例において24ヵ月以内の心不全による入院を評価
研究グループは、2012年12月27日~2017年6月23日の期間に、米国とカナダの78施設で、ガイドラインで推奨される最大用量の薬物療法を受けているにもかかわらず症状が持続している中等症~重症(Grade3+)または重症(Grade4+)の二次性MRの心不全患者614例を登録し、経皮的僧帽弁修復術+薬物療法(介入)群(302例)、または薬物療法単独(対照)群(312例)のいずれかに無作為に割り付けた。
主要有効性評価項目は、24ヵ月以内の心不全による入院とした。主要安全性評価項目は、12ヵ月時点でのデバイス関連合併症の無発生率とし、事前に定義した達成目標88.0%と比較した。有効性についてはintention-to-treat解析を実施した。
介入群で入院率および死亡率が有意に低下
患者背景は、平均年齢(±SD)72.2±11.2歳、36.0%が女性で、69.2%は手術関連合併症または死亡の高リスクと判定された。
主要評価項目である24ヵ月以内の心不全による入院は、年率で介入群35.8%/人年、対照群は67.9%/人年であった(ハザード比[HR]:0.53、95%信頼区間[CI]:0.40~0.70、p<0.001)。また、12ヵ月時点でのデバイス関連合併症の無発生率は96.6%であった(95%下側信頼限界:94.8%、達成目標のp<0.001)。24ヵ月以内の全死因死亡率は、介入群29.1%、対照群46.1%であった(HR:0.62、95%CI:0.46~0.82、p<0.001)。
著者は研究の限界として、機器の特性上、盲検化が困難であること、機器の安全性や有効性を完全に明らかにするためには5年以上の長期追跡が必要であることなどを挙げている。
(医学ライター 吉尾 幸恵)
Stone GW, et al. N Engl J Med. 2018 Sep 23. [Epub ahead of print]