スタチンによる治療を受けた患者の個々のデータを用いたメタ解析の結果、ベースライン時およびスタチン治療中のリポ蛋白(a)高値は、独立して心血管疾患(CVD)リスクとほぼ線形相関を示すことが明らかにされた。英国・ケンブリッジ大学のPeter Willeit氏らが報告した。リポ蛋白(a)値の上昇は、一般集団を対象とした研究においてCVDの遺伝的リスク因子であることが示されているが、CVD患者またはスタチン治療中の患者における心血管イベントリスクへの寄与度は不明であった。著者は、「リポ蛋白(a)値低下仮説を検証するCVDアウトカム研究を実施する理論的根拠が得られた」とまとめている。Lancet誌2018年10月4日号掲載の報告。
約2万9,000例でリポ蛋白(a)値と心血管イベントの関連を検証
研究グループは、スタチン治療中またはCVD既往歴を有する患者のリポ蛋白(a)値と心血管イベントリスクの関連性を検証する目的で、スタチンに関する無作為化プラセボ対照比較試験7件(AFCAPS、CARDS、4D、JUPITER、LIPID、MIRACL、4S)から個々の患者のデータを得て統合し、心血管イベント(致死的/非致死的冠動脈疾患、脳卒中、血行再建術)のハザード比(HR)を評価した。HRは、あらかじめ定義されたリポ蛋白(a)群(15~<30mg/dL、30~<50mg/dL、≧50mg/dL vs.<15mg/dL)別に各試験内で算出したのち、多変量ランダム効果メタ解析を用いて統合推定値を算出した。
解析には、複数回のリポ蛋白(a)測定値を有する2万9,069例(平均[±SD]年齢:62±8歳、女性:8,064例[28%]、イベント数:5,751件/9万5,576人年)が組み込まれた。
ベースライン時30mg/dL以上、スタチン治療中50mg/dL以上でCVDリスク増加
スタチン治療の開始は、リポ蛋白(a)を有意に変化させることなくLDLコレステロールを低下させた(平均変化:-39%、95%信頼区間[CI]:-43~-35)。
ベースライン時およびスタチン治療中のリポ蛋白(a)値とCVDリスクはほぼ線形相関にあり、リポ蛋白(a)値がベースライン時30mg/dL以上ならびにスタチン治療中50mg/dL以上でリスク増加が確認された。年齢と性別を補正したHR(vs.<15mg/dL)は、ベースライン時のリポ蛋白(a)値が15~<30mg/dLで1.04(95%CI:0.91~1.18)、30~<50mg/dLで1.11(1.00~1.22)、50mg/dL以上で1.31(1.08~1.58)、スタチン治療中でそれぞれ、0.94(0.81~1.10)、1.06(0.94~1.21)、1.43(1.15~1.76)であった。CVD・糖尿病の既往歴、喫煙歴、収縮期血圧、LDLコレステロールおよびHDLコレステロールで補正した後のHRも、ほぼ類似していた。
リポ蛋白(a)値とCVDリスクとの関連は、他の患者背景や試験の特性などの影響を修正しない場合、プラセボ投与中よりスタチン治療中がより強力であり(交互作用のp=0.010)、年齢が若い患者でより明確であった(交互作用のp=0.008)。
(医学ライター 吉尾 幸恵)