開発中のピーナッツ由来の生物学的経口免疫療法薬AR101は、高度ピーナッツアレルギーの小児・若年者において、プラセボと比較し試験終了時の食物負荷試験で用量制限を要する症状を伴わず高用量のピーナッツ蛋白の摂取が可能となり、ピーナッツ曝露中に発現する症状の重症度が低下することが認められた。米国・エモリー大学医学校のBrian P. Vickery氏らが、AR101の有効性と安全性を検証した第III相試験「Peanut Allergy Oral Immunotherapy Study of AR101 for Desensitization:PALISADE」の結果を報告した。ピーナッツアレルギーは、生命を脅かすこともある、予測不能なアレルギー反応のリスクがあるが、現状では承認された治療選択肢はない。NEJM誌2018年11月18日号掲載の報告。
主要有効性解析対象は4~17歳のピーナッツアレルギー保有者
PALISADE試験の対象は、4~55歳のピーナッツアレルギー保有者で、登録時に二重盲検プラセボ対照食物負荷試験を行い、ピーナッツ蛋白100mg(ピーナッツの実の約3分の1)以下の負荷量で用量制限を要するアレルギー症状の有無をスクリーニングし、症状を認めた場合を適格者として、AR101群またはプラセボ群に3対1の割合で無作為に割り付けた。
用量漸増期(0.5~6mg)の後、増量期(2週間ごとに3~300mgまで増量)を経て、維持期として300mg/日を24週間投与する約1年のプログラムを行い、完遂した被験者を対象に試験終了時に再び食物負荷試験を行った。
主要評価項目は、用量制限を要する症状を伴わず600mg以上の負荷量を摂取することができた4~17歳被験者の割合であった。統計解析にはFarrington-Manning検定を使用した。
AR101の1年間投与により約7割がピーナッツ蛋白600mg以上を摂取可能に
842例がスクリーニングを受け、551例がAR101群またはプラセボ群に割り付けられた。このうち、主要評価項目の解析対象である4~17歳は496例であった(AR101群372例、プラセボ群124例)。
4~17歳集団で終了時食物負荷試験において用量制限を要する症状を伴わずピーナッツ蛋白600mg以上を摂取することができたのは、AR101群250例(67.2%)、プラセボ群5例(4.0%)であった(群間差:63.2ポイント、95%信頼区間[CI]:53.0~73.3、p<0.001)。
終了時食物負荷試験中に認められた症状の重症度は、最も多かったのが中等度でAR101群25%、プラセボ群59%であり、重度はそれぞれ5%、11%であった。
4~17歳集団における有害事象は、全投与期間においてAR101群で98.7%、プラセボ群で95.2%に認められ、軽度がそれぞれ34.7%、50.0%、中等度が59.7%、44.4%、重度が4.3%および0.8%であった。
なお、18~55歳の被験者における有効性は副次評価項目であったが、用量制限を要する症状を伴わず600mg以上の負荷量を摂取することができた被験者の割合について、AR101群とプラセボ群で有意差は認められなかった。
(医学ライター 吉尾 幸恵)