mFOLFIRINOXが膵がん術後補助療法に有望/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2019/01/09

 

 転移を有する膵がんの術後補助療法において、フルオロウラシル/ロイコボリン+イリノテカン+オキサリプラチンによる併用化学療法(修正FOLFIRINOX[mFOLFIRINOX])はゲムシタビン(GEM)療法に比べ、全生存期間が有意に延長する一方で、高い毒性発現率を伴うことが、フランス・ロレーヌ大学のThierry Conroy氏らが実施した「PRODIGE 24-ACCORD 24/CCTG PA 6試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2018年12月20日号に掲載された。膵がんの治療では、手術単独の5年生存率は約10%と低く、術後補助療法ではGEM(日本ではS-1のエビデンスもある)が標準治療とされるものの、2年以内に69~75%が再発する。転移を有する膵がんの1次治療では、従来のFOLFIRINOXはGEMに比べ、全生存期間を延長することが知られている。

mFOLFIRINOX群に247例、GEM群に246例を割り付け

 研究グループは、膵がん切除例において、術後補助療法としてのmFOLFIRINOXレジメンの有効性と安全性をGEMと比較する非盲検無作為化第III相試験を行った(R&D Unicancerなどの助成による)。

 mFOLFIRINOXレジメンは、従来のFOLFIRINOXレジメンに含まれるフルオロウラシルのボーラス投与を行わないことで、血液毒性や下痢の発生を抑制し、重症度の軽減を図るもので、進行膵がんでは治療効果は低下しないことが確認されている。

 対象は、年齢18~79歳、組織学的に膵管腺がんが確認され、割り付けの3~12ヵ月前に肉眼的完全切除術(R0:すべての切除断端から1mm以内にがん細胞がない、R1:1つ以上の切除断端から1mm以内にがん細胞がある)を受け、転移病変や悪性腹水、胸水のエビデンスがない患者であった。

 被験者は、mFOLFIRINOX群(オキサリプラチン[85mg/m2体表面積]、イリノテカン[180mg/m2、プロトコールで規定された安全性解析後は150mg/m2に減量]、ロイコボリン[400mg/m2]、フルオロウラシル[2,400mg/m2]を、2週ごとに12サイクル投与)またはGEM群(4週を1サイクルとし、1、8、15日目に1,000mg/m2を静脈内投与、6サイクル)に無作為に割り付けられ、24週の治療が行われた。

 主要エンドポイントは無病生存期間(割り付け日から初回がん関連イベント、2次がん、全死因死亡までの期間)とし、副次エンドポイントには全生存期間、安全性などが含まれた。

 2012年4月~2016年10月の期間に、フランスの58施設とカナダの19施設で493例が登録され、mFOLFIRINOX群に247例、GEM群には246例が割り付けられた。

mFOLFIRINOX群で無病生存期間が8.8ヵ月、全生存期間は19.4ヵ月延長

 ベースラインの年齢中央値は、mFOLFIRINOX群が63歳(範囲:30~79)、GEM群は64歳(30~81)、男性がそれぞれ57.5%、54.9%であった。リンパ管浸潤(73.7% vs. 63.1%、p=0.02)を除き、人口統計学データや疾患特性に差はなかった。治療期間中央値は、mFOLFIRINOX群が24.6週、GEM群は24.0週だった。

 フォローアップ期間中央値は33.6ヵ月であった。無病生存期間中央値は、mFOLFIRINOX群が21.6ヵ月と、GEM群の12.8ヵ月に比べ有意に延長した(層別化ハザード比[HR]:0.58、95%信頼区間[CI]:0.46~0.73、p<0.001)。3年無病生存率は、それぞれ39.7%、21.4%であった。イリノテカンの減量は無病生存期間に影響しなかった(p=0.87)。

 全生存期間中央値は、mFOLFIRINOX群は54.4ヵ月であり、GEM群の35.0ヵ月に比し有意に良好であった(層別化HR:0.64、95%CI:0.48~0.86、p=0.003)。3年全生存率は、それぞれ63.4%、48.6%だった。

 mFOLFIRINOX群は、無転移生存期間(割り付け日から初回遠隔転移または死亡までの期間、30.4ヵ月vs.17.7ヵ月、p<0.001)およびがん特異的生存期間(割り付け日から治療対象がんまたは治療関連合併症による死亡までの期間、未到達vs.36.4ヵ月、p=0.003)も有意に優れた。

 Grade3/4の有害事象は、mFOLFIRINOX群が75.9%、GEM群は52.9%で発現した。血液毒性の発現には両群間に差はないものの、好中球減少/発熱性好中球減少へのG-CSFの投与がmFOLFIRINOX群で多く(62.2% vs.3.7%、p<0.001)、非血液毒性の多く(疲労、下痢、悪心、腹痛、嘔吐、感覚性末梢神経障害、異常感覚、粘膜炎)がmFOLFIRINOX群で有意に発現率が高かった。GEM群の1例が治療関連毒性(間質性肺炎)により死亡した。

 著者は、「予想どおりmFOLFIRINOXの安全性プロファイルはGEMに比べ不良であったが、管理可能だった。フルオロウラシルのボーラス投与の非施行(およびイリノテカンの減量)により、Grade3/4の好中球減少は既報(PRODIGE試験)のFOLFIRINOXの46%から、本試験では28%に減少した」としている。

(医学ライター 菅野 守)

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コメンテーター : 上村 直実( うえむら なおみ ) 氏

国立国際医療研究センター国府台病院 名誉院長

東京医科大学 消化器内視鏡学講座 兼任教授

J-CLEAR評議員