禁煙を希望する成人に対し、電子タバコの使用はニコチン代替療法に比べて、より効果が大きいことが示された。英国・ロンドン大学クイーンメアリー校のPeter Hajek氏らが、886例の禁煙希望者を対象に行った無作為化比較試験の結果、1年時の禁煙率は電子タバコ群がニコチン代替療法群に比べて1.83倍だったという。電子タバコは、禁煙の試みとして一般的に用いられている。しかし、禁煙治療として承認されているニコチン代替療法と比較した有効性に関するエビデンスは限定的であった。NEJM誌オンライン版2019年1月30日号掲載の報告。
ニコチン代替製品を最長3ヵ月提供vs.電子タバコのスターターパックを提供
研究グループは、英国・国民保健サービス(NHS)の禁煙プログラムに参加する成人886例を無作為に2群に分け、一方にはニコチンパッチやガムなど、被験者の選択によるニコチン代替製品を最長3ヵ月提供した(NRT群)。もう一方の群には、電子タバコのスターターパック(第2世代詰め替え式電子タバコと濃度18mg/mLのニコチンリキッド1本)を与え、好みのフレイバーと濃度のニコチンリキッドを自分で追加購入するよう勧めた。そのうえで、両群に対し禁煙に対する行動支援を週1回、4週間以上にわたって行った。
主要評価項目は、1年時点の禁煙率で、最終診察時に生化学検査(呼気中一酸化炭素濃度8ppm未満)で判定した。追跡不能や生化学検査ができなかった場合には、禁煙は達成されていないものと判定した。
副次評価項目は、自己報告によるニコチン代替製品や電子タバコの使用状況、呼吸器症状などだった。
1年時の禁煙率、電子タバコ群18%、NRT群9.9%
1年時の禁煙率は、NRT群9.9%、電子タバコ群18.0%だった(相対リスク:1.83、95%信頼区間[CI]:1.30~2.58、p<0.001)。
1年時の禁煙者において、52週時点で当初割り付け群のニコチン代替製品または電子タバコを使い続けていたのは、NRT群が9%(4/44例)だったのに対し、電子タバコ群は80%(63/79例)だった。
全体的に、喉や口腔の炎症は、NRT群(51.2%)よりも電子タバコ群(65.3%)で高率に認められたが、悪心の発現頻度は、NRT群(37.9%)のほうが電子タバコ群(31.3%)よりも高率だった。
ベースラインから52週の間の咳や痰の発現頻度は、電子タバコ群がNRT群よりも低かった(咳の相対リスク:0.8[95%CI:0.6~0.9]、痰の相対リスク:0.7[0.6~0.9])。なお、喘鳴や息切れの発現頻度については、両群で有意差はなかった。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)