外科医の研修プログラムを途中で辞めた女性医師を対象に、その理由を調査したところ、「休暇を取るのが困難」「同じ専門医の女性同士の交流が少ない」「支援体制の欠如」など6つの要因が浮き彫りになった。オーストラリア・Gold Coast Hospital and Health ServiceのRhea Liang氏らが、女性医師12人へのインタビューで明らかにしたもので、Lancet誌2019年2月9日号で発表した。英国とオーストララシアでは、外科専門医のうち女性医師の占める割合はわずか11%で、外科研修プログラムを途中で辞めてしまう割合も女性医師が男性医師より高いという。
4ヵ月にわたるインタビューで原因を調査
研究グループは、外科医の研修プログラムを途中で辞めた女性医師12人を対象に、その理由などを調べる質的調査を行った。
Royal Australasian College of Surgeons(RACS)とその研修協会を通じて、スノーボール・サンプリング法で被験者を3週かけて抽出。その後、過去4年間についてのインタビュー調査を、面接または電話で4ヵ月にわたり行った。
インタビュー内容について共同研究者や被験者との対話からコード化し、その課題を定義した。異なる理論やこれまでの文献を基に、説明モデルを構築した。
被験者はオーストラリア全域、ニュージーランド、5つの専門分野を代表
被験者12人の女性医師は、オーストラリアの州と特別地域、ニュージーランド、また5つの医学専門分野を代表していた。研修プログラムの在籍期間は、6ヵ月~4年間で、2人を除き、都市部と農村部の両地域で働いた経験があった。
女性医師が外科研修プログラムを離脱する理由として、これまでに明らかにされていた理由に加え、新たに6つの要因が浮き彫りになった。具体的には、「病気などで休暇を取ることが難しい」「休暇の正当な理由についての区別が曖昧」「精神衛生の状態が悪い」「同じ専門外科の女性医師やその他支援者との交流が少ない」「職場での不当な扱いを報告した場合などに対し否定的な結果に及ぶ恐怖感がある」「問題があった際に個人や特定のサポートへの道筋が欠けている」だった。個々の要因の関連性は複雑で、ときに逆説的だった。
研究グループは、外科研修離脱の意思決定に関与した要因それぞれを「ブロック」で表現して、ブロックをタワー状に積み上げ、離脱を選択するとそのタワーが倒れるということを、視覚的に表現した。とくに、ブロックが不安定な状態のまま積み上がっていくと、小さな出来事でもタワーが倒れるきっかけとなること、すなわち研修プログラムを辞める決断につながることを示し、個々の要因に対する効果的なアクションが必要だとした。
そのうえで、「女性への支援は、性別に重点を置くのではなく、多様な因子に気を配りながら、予期せぬ負の影響の可能性に留意した介入が効果的なのではないか」と述べ、「これらのことを外科研修の介入に生かし、外科分野の特異性、医療現場であること、そして研修プログラムの構造に注意するべきだろう」とまとめている。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)