1種以上の抗不整脈薬またはβ遮断薬に対し治療抵抗性を示す症候性心房細動(AF)患者に対して、カテーテルアブレーションの施行は、異なる抗不整脈薬を投与し薬物療法を続けた場合と比べ、12ヵ月後の生活の質(QOL)が大幅に改善したことが示された。スウェーデン・ウプサラ大学のCarina Blomstrom-Lundqvist氏らが、155例を対象に行った無作為化比較試験の結果で、JAMA誌2019年3月19日号で発表した。結果について著者は、「本試験は盲検化がなされていない点で限定的だが、カテーテルアブレーションはQOLに関しては優位な可能性がある」とまとめている。
MOS SF-36で1年後のQOLを評価
研究グループは2008年7月~2013年5月に、スウェーデン4ヵ所、フィンランド1ヵ所の計5病院を通じて、6ヵ月以上のAFを認め、1種以上の抗不整脈薬またはβ遮断薬に対し治療抵抗性を示す30~70歳の患者155例を対象に試験を行い、4年間追跡した(試験終了は2017年9月28日)。主な除外基準は、駆出分画率35%未満、左心房径60mm超、心室ペーシング依存、アブレーション歴ありだった。
被験者を無作為に2群に分け、一方にはカテーテルアブレーションを行い(79例)、もう一方には服用歴のない抗不整脈薬を投与した(76例)。
主要評価項目は、ベースラインと12ヵ月後の総合的健康状態(GH)サブスケールスコアで、MOS SF-36(Medical Outcomes Study 36-Item Short-Form Health Survey)を用いて非盲検下で評価した(範囲:0[最悪]~100[最良])。副次評価項目は、植込み型心臓モニターで測定したベースラインから12ヵ月後のAF負荷(時間の割合[%])の変化など26項目とした。なお当初3ヵ月間は、リズム分析から除外した。
1年後GHスコア、アブレーション群で有意に増加
被験者155例は、平均年齢56.1歳、女性が22.6%を占め、97%が試験を完遂した。
アブレーション群79例のうち、実際にアブレーションを受けたのは75例だった。2例が抗不整脈薬群に移行した。アブレーション群75例のうちアブレーション再施行を受けたのは14例だった。抗不整脈薬群76例のうち、実際に薬を服用したのは74例だった(平均1.71剤を服用)。8例がアブレーション群に移行した。74例のうち、43例が服用1剤目で抵抗性を示した。
ベースラインから12ヵ月後のGHスコアは、抗不整脈薬群は62.7から65.4ポイントへの増加に対し、アブレーション群は61.8から73.9ポイントへ増加し、有意差が認められた(群間差:8.9ポイント、95%信頼区間[CI]:3.1~14.7、p=0.003)。
26の副次評価項目のうち5項目について解析した結果、2項目については意義のある結果は示されなかったが、2項目について統計的に有意な結果が認められた。そのうち、ベースラインから12ヵ月後のAF負荷の変化は、抗不整脈薬群は23.3%から11.5%への減少に対し、アブレーション群は24.9%から5.5%へと減少した(群間差:-6.8ポイント、95%CI:-12.9~-0.7、p=0.03)。また、MOS SF-36サブスケール7つのうち5つで有意な改善を認めた。
最も多くみられた有害イベントは、アブレーション群は尿路性敗血症(5.1%)、抗不整脈薬群は心房性頻脈(3.9%)だった。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)