新世代DES vs.BMS、2万例超のメタ解析結果/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2019/05/17

 

 経皮的冠動脈インターベンション(PCI)施行後最初の1年における新世代薬剤溶出ステント(DES)の成績は、安全面から従来のベアメタルステント(BMS)を標準治療と見なすべきとする見解を打破するものであることが示唆されたという。イタリア・フェデリコ2世 ナポリ大学のRaffaele Piccolo氏らが、新世代DESとBMSのアウトカムを比較検証した無作為化臨床試験のシステマティックレビューとメタ解析の結果を報告した。新世代DESは、ほとんどが初期DESと直接比較する非劣性試験で検証され、概して同等の有効性と優れた安全性が示されてきたが、BMSとの比較については明確なものがなかった。今回の結果から著者は「1年を超える臨床アウトカムの改善を目標に、DESのさらなる技術開発が望まれる」とまとめている。Lancet誌オンライン版2019年5月2日号掲載の報告。

無作為化臨床試験20件2万6,616例の個人データをメタ解析
 研究グループは、PCI施行患者における新世代DESとBMSの転帰を比較するため、2017年12月19日までに報告された無作為化臨床試験の個人データのメタ解析を実施した。

 主要評価項目は、心臓死または心筋梗塞の複合エンドポイントとした。ランダム効果モデルの一段階法でデータを併合し、最大調査期間および1年のランドマーク解析で検証した。また、リスク推定はハザード比(HR)およびその95%信頼区間(CI)として報告。解析はすべてIntention-to-treat集団にて行われた。

 メタ解析には、無作為化試験20件、合計2万6,616例が組み込まれた。追跡調査期間は平均(±SD)3.2±1.8年であった。

新世代DES、複合エンドポインドのHRは0.84と有意に低下
 主要評価項目の複合エンドポイントは、BMS留置患者よりDES留置患者で有意なリスク低下を認めた(HR:0.84、95%CI:0.78~0.90、p<0.001)。心筋梗塞の有意なリスク低下(HR:0.79、95%CI:0.71~0.88、p<0.001)が大きく寄与しており、心臓死のリスクは低下が認められたが有意ではなかった(HR:0.89、95%CI:0.78~1.01、p=0.075)。

 全死因死亡への影響は認められなかったが、ステント血栓症(definite)(HR:0.63、95%CI:0.50~0.80、p<0.001)および標的血管再血行再建術(HR:0.55、95%CI:0.50~0.60、p<0.001)のリスクは、DES留置患者で低下した。

 DES留置による主要評価項目の有意なリスク低下は、留置後最長1年まで認められ、時間依存的な効果が確認された。治療効果は長期的に維持されたものの、1年後を超えて以降はBMS留置との差は確認されなかった。

 なお、今回の結果について著者は、抗血小板薬2剤併用療法の実施期間の影響は加味されていないことなどを研究の限界として指摘している。

(医学ライター 吉尾 幸恵)

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コメンテーター : 中川 義久( なかがわ よしひさ ) 氏

滋賀医科大学 循環器内科 教授

J-CLEAR評議員