2017年1月、ペンシルベニア州フィラデルフィア市は、砂糖あるいは人工甘味料入り飲料の消費を減らすために、1オンス(約30mL)当たり1.5セントの加糖飲料税(いわゆるソーダ税)を米国で2番目に導入した。米国・ペンシルベニア大学医学大学院のChristina A. Roberto氏らは、課税導入後の飲料価格と販売量について、フィラデルフィアと非課税のメリーランド州ボルティモア市を比較し、課税商品の購入を避けるための越境ショッピングの可能性を評価した。解析の結果、フィラデルフィアでは加糖飲料の価格が有意に上昇し、課税飲料の販売量は半減したことが認められたが、その一部は、近隣地域での販売量増加によって相殺されることが明らかになったという。JAMA誌2019年5月14日号掲載の報告。
課税導入のフィラデルフィアと非導入地域で、価格、販売量を比較・解析
研究グループは、差分の差分法(difference-in-differences)を用い、2016年1月1日(課税前)~2017年12月31日(課税後)の期間の販売データを解析し変化を比較した。店の形態、飲料の甘味料の種類、飲料の大きさごとの違いを検証。小売業者の販売データには、フィラデルフィア、ボルティモア(非課税の対照都市)、フィラデルフィア近隣地域(フィラデルフィア市境界から約3マイル以内のバックス郡、デラウェア郡、モンゴメリー郡)にある大規模チェーン店の販売データも組み込まれた。これらのデータは、フィラデルフィアにおける課税飲料の販売量(オンス)の約25%に相当した。
主要評価項目は、課税飲料の価格と販売量の変化であった。
近隣地域の増加分を差し引くと課税都市フィラデルフィアの販売量低下は38%
計291店(スーパーマーケット54店、大型小売店20店、薬局217店)のデータが解析に組み込まれた。
フィラデルフィアでは、ボルティモアと比較して加糖飲料の価格が有意に上昇し、課税導入後の課税飲料の販売量が有意に低下した。
すなわち、フィラデルフィアとボルティモアにおいて、加糖飲料1オンス当たりの平均価格は、課税導入後にすべての形態の店で上昇した。フィラデルフィアでは、スーパーで5.43セント(2016年)から6.24セント(2017年)に、大型店で同5.28→6.24セントに、薬局で同6.60→8.28セントに上昇した。ボルティモアではそれぞれ、5.33→5.50/6.34→6.52/6.76→6.93セントに上昇した。両都市間の1オンス当たりの平均価格上昇分の差は、スーパー0.65セント(95%信頼区間[CI]:0.60~0.69)、大型店0.87(0.72~1.02)、薬局1.56(1.50~1.62)で有意差があった(すべてのp<0.001)。
また、両都市とも4週間当たりの加糖飲料の販売量には、すべての形態の店での減少が認められた。フィラデルフィアでは、スーパーで485万→199万オンスに、大型店で298万→172万オンスに、薬局で16万→13万オンスに減少した。ボルティモアではそれぞれ、283万→281万/105万→100万/14万→13万オンスに減少した。両都市間の減少分の差は、スーパーが-285万オンス(95%CI:-410万~-160万、p<0.001)で、ボルティモアと比較しフィラデルフィアのスーパーでは58.7%低下した。同じく、大型店は-120万オンス(-204万~-36万、p=0.001)、40.4%低下、薬局は-2万オンス(-3万~-1万、p<0.001)、12.6%の低下であった。
フィラデルフィアにおける課税飲料の販売総量は、課税導入後に12億6,100万オンス(2016年:24億7,500万→2017年:12億1,400万)、51.0%の低下が認められた。一方で、近隣地域における販売量が3億820万オンス(7億1,310万→10億2,100万)増加していた。これは、フィラデルフィアにおける販売量低下の24.4%を相殺し、フィラデルフィアでの実質販売量低下は38%と考えられた。
(医学ライター 吉尾 幸恵)