医療資源が乏しい環境下の重症高血圧症の妊婦について、基準値への降圧を図る経口薬治療の効果を検証した結果、ニフェジピン、メチルドパ、ラベタロールのいずれもが現実的な初回選択肢であることが示された。3薬間の比較では、ニフェジピンの降圧達成率がより高かったという。米国・ワシントン大学のThomas Easterling氏らが、これまで検討されていなかった3種の経口降圧薬の有効性と安全性を直接比較する多施設共同非盲検無作為化比較試験を行い、Lancet誌オンライン版2019年8月1日号で発表した。高血圧症は妊婦における最も頻度の高い内科的疾患であり、重症例では広く母体のリスク低下のための治療が推奨される。急性期治療としては一般に静脈投与や胎児モニタリングが有効だが、医療従事者が多忙であったり医療資源が限られている環境下では、それらの治療は困難であることから研究グループは本検討を行った。
妊娠28週以上の重症高血圧症にニフェジピン・ラベタロール・メチルドパ投与
試験はインド・ナーグプールの公立病院2ヵ所で、妊娠28週以上、収縮期血圧値が160mmHg以上または拡張期血圧値が110mmHg以上の重症高血圧症で、薬による血圧コントロールを必要とし、経口薬服用が可能な18歳以上の女性を対象に行われた。
被験者を無作為に3群に分け、ニフェジピン10mg、ラベタロール200mg(いずれも高血圧が持続する場合は投与量を3倍まで毎時増加)、メチルドパ1,000mg(1回投与、増量なし)をそれぞれ行った。試験群における増量プロトコールが異なるため、被験者、試験研究者および治療担当者のマスキングはできなかった。
主要アウトカムは、有害アウトカムを伴わない6時間以内の血圧コントロール(収縮期血圧120~150mmHg/拡張期血圧70~100mmHg)だった。
重症の妊娠高血圧の血圧コントロール率、ニフェジピン群が84%で最も高率
2015年4月1日~2017年8月21日に2,307例の女性をスクリーニングした。うち1,413例(61%)を、不適格、試験参加を拒否、子癇前症、活性分娩、あるいはそれらを複合的に有するなどの理由で除外した。また、ニフェジピン群11例(4%)、ラベタロール群10例(3%)、メチルドパ群11例(4%)が治療不適(血圧測定が1回のみであったため)、または治療が中断となった(分娩または転院などのため)。
重症の妊娠高血圧症894例(39%)が無作為化を受け、ITT解析の対象に包含された。ニフェジピン群は298例(33%)、ラベタロール群は295例(33%)、メチルドパ群は301例(33%)だった。
主要アウトカムの発生は、メチルドパ群が230例(76%)に対しニフェジピン群が249例(84%)と、有意に高率だった(p=0.03)。一方で、ニフェジピン群vs.ラベタロール群(228例[77%]、p=0.05)、ラベタロール群vs.メチルドパ群(p=0.80)では、いずれも有意差はなかった。
重症有害事象の発生は7例(出生児の1%)だった。ラベタロール群の妊婦1例(<1%)が分娩時発作を、6例(1%)は死産であった(ニフェジピン群1例[<1%]、ラベタロール群2例[1%]、メチルドバ群3例[1%])。1件以上の有害事象を有した出生例はなかった。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)