中年期~晩年期に高血圧症の人や、中年期に高血圧症で晩年期に低血圧症の人は、中年期~晩年期に正常血圧の人に比べ、認知症を発症するリスクが約1.5~1.6倍高いことが明らかにされた。米国・ジョンズ・ホプキンズ大学のKeenan A. Walker氏らが住民ベースのコホート試験で明らかにした。晩年期の血圧値と認知機能の関係は、過去の高血圧症やその慢性化によると考えられている。また、高血圧が続いた後の晩年期の血圧低下は、不良な認知機能アウトカムと関連している可能性も指摘されていた。JAMA誌2019年8月13日号掲載の報告。
4コミュニティの45~65歳を計6回追跡
研究グループは、米国内4ヵ所のコミュニティ(メリーランド州ワシントン郡、ノースカロライナ州フォーサイス郡、ミシシッピ州ジャクソン、ミネソタ州ミネアポリス)に住む45~65歳を対象に1987~89年から試験を開始し、3年ごとに、1996~98年まで4回にわたり被験者を対面で診察した。その15年後の2011~13年には5回目の、2016~17年には6回目の診察を行い、詳細な神経認知評価を行った。血圧測定は、1~5回目の診察時にそれぞれ行った。最終追跡は2017年12月31日。
中年期~晩年期の正常血圧、高血圧症(収縮期血圧140mmHg/拡張期血圧90mmHg超)、低血圧症(収縮期血圧90mmHg/拡張期血圧60mmHg未満)と、認知症、軽度認知障害、認知機能低下との関連を検証した。
主要アウトカムは、介護者による観察尺度AD8(Ascertain Dementia-8)、電話による6項目スクリーナー、退院サマリーや死亡診断書の診断コード、6回目診察時の神経認知評価に基づく、5回目診察時以降の認知症発症だった。副次アウトカムは、6回目診察時の軽度認知障害だった。
中年期に高血圧症で晩年期に低血圧症、軽度認知障害は1.65倍に
被験者数は4,761例で、そのうち女性は2,821例(59%)、979例(21%)が黒人。5回目診察時の平均年齢は75(SD 5)歳で、1回目診察時の平均年齢範囲は44~66歳、同5回目は66~90歳だった。5回目と6回目の診察の間に認知症を発症したのは、516例(11%)だった。
認知症罹患率は、中年期~晩年期の正常血圧群(833例)は1.31/100人年(95%信頼区間[CI]:1.00~1.72)、中年期に正常血圧で晩年期に高血圧症の群(1,559例)は1.99/100人年(1.69~2.32)、中年期~晩年期に高血圧症の群(1,030例)は2.83/100人年(2.40~3.35)、中年期に正常血圧で晩年期に低血圧症の群(927例)は2.07/100人年(1.68~2.54)、中年期に高血圧症で晩年期に低血圧症の群(389例)は4.26/100人年(3.40~5.32)だった。
中年期~晩年期に高血圧症の群や、中年期に高血圧症で晩年期に低血圧症の群は、同期間に正常血圧の群に比べ、認知症発症リスクはいずれも高く、ハザード比(HR)はそれぞれ、1.49(95%CI:1.06~2.08)と1.62(1.11~2.37)だった。晩年期の血圧値にかかわらず、中年期の高血圧症の持続と認知症リスクには関連が認められた(HR:1.41、95%CI:1.17~1.71)。
中年期~晩年期に正常血圧の群と比べて、中年期に高血圧症で晩年期に低血圧症の群では、軽度認知障害のリスクが高かった(患者37例、オッズ比:1.65、95%CI:1.01~2.69)。血圧パターンと晩年期の認知機能変化との有意な関連は認められなかった。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)