高所得国における高血圧の認識・治療・コントロール率は、1980~90年代以降、大幅に改善されたものの、コントロール率は質の高い高血圧プログラム(たとえば、カイザーパーマネンテ北カリフォルニアの高血圧管理プログラム)の下での割合に比べると低い状態で、直近の10年は横ばいとなっていること、また、高血圧の認識・治療・コントロール率は国によって大きな違いがあるとの実態が明らかにされた。英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのBin Zhou氏らが、高所得国12ヵ国のデータを解析し報告した。高血圧治療は有害心血管イベントの低下に有効であるが、高所得国を対象にした高血圧の認識・治療・コントロール率に関する経時的な傾向を比較検討する研究はこれまでなかった。Lancet誌2019年8月24日号掲載の報告。
日本を含む高所得国12ヵ国、約53万人のデータを解析
研究グループは、高所得国12ヵ国(オーストラリア、カナダ、フィンランド、ドイツ、アイルランド、イタリア、日本、ニュージーランド、韓国、スペイン、英国、米国)の、1976~2017年における国民健康調査123件から40~79歳のデータを用い、高血圧(収縮期血圧140mmHg以上、拡張期血圧90mmHg以上)で、薬物治療を受けている患者の割合(高血圧の有病率)を算出するとともに、高血圧であることを認識している患者の割合(認識率)、高血圧に対する薬物療法を受けている患者の割合(治療率)、高血圧がコントロールされている(140/90mmHg未満)患者の割合(コントロール率)を算出した。
合計52万6,336例が解析に組み込まれた。
日本は12ヵ国の中で最低レベル
各国直近の調査結果を見ると、カナダ、韓国、オーストラリアおよび英国で高血圧の有病率が低く、フィンランドが最も高かった。
1980~90年代前半においては、いずれの国の年齢群および性別群においても、高血圧の治療率は高くて40%、コントロール率は25%未満であった。
評価対象期間中に全12ヵ国で、高血圧の認識・治療率は上昇し、コントロール率は改善した。最も改善したのは韓国とドイツであった。また、観察された改善の多くは1990~2000年代半ばに認められており、その後はほとんどの国で横ばいとなっていた。
直近の調査では、カナダ、ドイツ、韓国および米国において認識・治療・コントロール率が高かった。最も低いのはフィンランドで、アイルランド、日本およびスペインも低かった。しかし最優良国でさえ、治療率は高くて80%、コントロール率は70%には達していない状況であった。
(医学ライター 吉尾 幸恵)