駆出率が低下した心不全(HFrEF)患者において、sacubitril/バルサルタン投与はNT-proBNP値を低下し、12ヵ月時点の心臓容積・心機能マーカーの改善とわずかだが有意に関連することが明らかにされた。米国・マサチューセッツ総合病院のJames L. Januzzi Jr氏らが、794例の患者を対象に行った前向き非盲検試験の結果で、これまでsacubitril/バルサルタン投与の、心臓リモデリングへの影響は明らかになっていなかった。著者は「観察された心臓の逆リモデリングは、HFrEF患者においてsacubitril/バルサルタンの機械的効果をもたらす可能性を示唆するものといえる」とまとめている。JAMA誌オンライン版2019年9月2日号掲載の報告。
log2-NT-proBNP濃度変化と心臓容積・心機能マーカーの関連を検証
研究グループは、2016年10月25日~2018年10月22日にかけて、米国78ヵ所の外来医療センターを通じ、HFrEF患者794例を対象に12ヵ月間にわたる単群前向き非盲検試験を行った。被験者には、sacubitril/バルサルタンを投与し、用量調整を行った。また、投与患者のNT-proBNP値を測定した。
主要アウトカムは、12ヵ月時点におけるlog2-NT-proBNP値の変化と、左室駆出率(LVEF)、左室拡張末期容積指数(LVEDVI)、左室収縮末期容積指数(LVESVI)、左房容積指数(LAVI)、早期左室流入ドップラー速度と早期拡張期弁輪運動速度の比率(E/e')との関連性だった。
LVEF、LVEDVI、LVESVI、LAVI、E/e'のいずれも関連性あり
被験者の平均年齢は65.1歳、女性の割合は28.5%で、平均LVEF値は28.2%、試験を終了したのは654例(82.4%)だった。ベースラインのNT-proBNP濃度の中央値は816pg/mL(四分位範囲[IQR]:332~1,822)、12ヵ月後は455pg/mL(IQR:153~1,090)だった(差のp<0.001)。
12ヵ月後のlog2-NT-proBNP値の変化との関連性は、LVEF(r=-0.381[IQR:-0.448~-0.310]、p<0.001)、LVEDVI(r=0.320[IQR:0.246~0.391]、p<0.001)、LVESVI(r=0.405[IQR:0.335~0.470]、p<0.001)、LAVI(r=0.263[IQR:0.186~0.338]、p<0.001)、E/e'(r=0.269[IQR:0.182~0.353]、p<0.001)のすべてについて認められた。
12ヵ月後までに、LVEFは28.2%から37.8%へ有意に増加し(差:9.4%[95%信頼区間[CI]:8.8~9.9]、p<0.001)、LVEDVIは86.93mL/m
2から74.15mL/m
2へ有意に減少(差:-12.25mL/m
2[IQR:-12.92~-11.58]、p<0.001)、LVESVIは61.68mL/m
2から45.46mL/m
2へ減少した(差:-15.29mL/m
2[IQR:-16.03~-14.55]、p<0.001)。LAVIとE/e'も有意に減少した。
最も頻度の高い有害事象は、低血圧症(17.6%)で、めまい(16.8%)、高カリウム血症(13.2%)、腎機能悪化(12.3%)と続いた。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)