ワルファリン治療を受けている65歳以上高齢者の股関節・膝関節置換術後に、国際標準化比(INR)目標値を1.8としても、同目標値2.5に対して、静脈血栓症(VTE)または死亡の複合アウトカムのリスクについて、非劣性の基準を満たさなかったことが報告された。米国・ワシントン大学セントルイス校のBrian F. Gage氏らが、1,650例の患者を対象に行った無作為化比較試験「Genetic Informatics Trial(GIFT)of Warfarin to Prevent Deep Vein Thrombosis」の結果で、JAMA誌2019年9月3日号で発表した。ワルファリン治療中の関節手術を受ける患者について、VTE予防のための最適なINR値は明らかになっていなかった。
米国6ヵ所の医療機関で1,650例を対象に2×2要因デザイン試験
研究グループは、2011年4月~2016年10月にかけて、米国6ヵ所の医療機関を通じて、待機的人工股関節・膝関節置換術を行う65歳以上の患者1,650例を対象に2×2要因デザイン試験を行った。
被験者を、目標INR値1.8の群(823例)と2.5の群(827例)に、またワルファリン投与量について遺伝型または臨床的ガイド群にそれぞれ無作為に割り付けた。なお治療開始当初の11日間は、ワルファリン投与は非盲検下でウェブアプリケーションによるガイド下で行われた。
主要アウトカムは、60日以内のVTE発生または30日以内の死亡の複合だった。術後に二重超音波検査法でVTEスクリーニングを実施。目標INR値1.8は同2.5に対し、非劣性であるとする仮説を立て、非劣性マージンはVTE絶対リスク差3ポイントと規定した。副次エンドポイントは、出血、INR値4以上とした。
VTE発生はINR値1.8群5.1%、INR値2.5群3.8%
被験者1,650例の平均年齢は72.1歳、女性は63.6%、白人が91.0%を占めた。主要解析は、ワルファリンを1回以上投与された1,597例(96.8%)を対象に行われた。
主要複合アウトカムの発生率は、INR値1.8群は5.1%(804例中41例)に対し、INR値2.5群は3.8%(793例中30例)で、群間の絶対差は1.3%だった(片側95%信頼区間[CI]:-∞~3.05、非劣性のp=0.06)。被験者の死亡はなく、すべての主要アウトカムはVTE発生で、事前に規定した非劣性の定義は満たされなかった。
大出血の発生は、1.8群0.4%、2.5群0.9%で群間差は-0.5%(95%CI:-1.6~0.4)だった。INR値4以上の発現頻度は、それぞれ4.5%、12.2%で群間差は-7.8%(-10.5~-5.1)だった。
なお同研究グループは、同試験は検出力不足であった可能性があるとし、さらなる研究を行う必要があると指摘している。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)