欧州の大規模な4つのデータベースを用いた検討で、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)と診断された成人は、年齢、性別、診療情報を適合したNAFLDを有さない成人と比較して、既知の心血管リスク因子補正後、急性心筋梗塞(AMI)や脳卒中の発生リスクに、わずかな増大は認められるが有意差はないことが明らかにされた。英国・GlaxoSmithKlineのMyriam Alexander氏らが計1,770万例を対象とした適合コホート試験の結果で、著者は「NAFLD診断成人の心血管リスク評価は重要だが、一般集団のそれと同様とすべきであろう」と述べている。NAFLDは、メタボリックシンドロームやその他のAMIや脳卒中のリスク因子との関連が認められている。AMIおよび脳卒中リスク増大との関連、および心血管疾患の代用マーカー(surrogate marker)との関連が示されているが、既知のリスク因子補正後の関連性について完全には確立されていなかった。BMJ誌2019年10月8日号掲載の報告。
NAFLD/NASH診断例約12万例を追跡
研究グループは欧州4ヵ国の、2015年12月までのプライマリケアの電子データベースを用いて、住民ベースの適合コホート試験を行った。各データベースの患者数は、イタリア154万2,672例、オランダ222万5,925例、スペイン548万8,397例、英国1,269万5,046例だった。
そのうち、NAFLDまたは非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の診断を受け、かつその他の肝疾患のない12万795例を対象に分析を行った。同一データベースから、診断日の年齢、性別、医療機関、受診状況、診断日前後6ヵ月時点の医療記録でマッチングした、NAFLDまたはNASHのない被験者を最大100例選んだ。
主要アウトカムは、致死的または非致死的AMIおよび虚血性/unspecified脳卒中だった。ランダム効果メタ解析により、Coxモデルを用いて複数データベースのプールド・ハザード比(HR)を推計した。
年齢や喫煙、血圧、2型DM、総コレステロール値などで補正後、リスク増大なし
NAFLD/NASHの診断を受けた12万795例について、診断日からの追跡期間はコホート集団により異なり、中央値2.1~5.5年だった。
年齢と喫煙について補正後、AMI発症に関するHRは1.17(95%信頼区間[CI]:1.05~1.30)だった(イベント数はNAFLD/NASH群1,035件、コントロール群6万7,823件)。より多くのリスク因子情報を含むNAFLD/NASH患者8万6,098例と適合コントロール466万4,988例についての解析では、収縮期血圧、2型糖尿病、総コレステロール値、スタチン服用の有無、高血圧症で補正後、AMI発症に関するHRは1.01(95%CI:0.91~1.12)だった(NAFLD/NASH群747件、コントロール群3万7,462件)。
年齢と喫煙状況で補正後の、脳卒中発症に関するHRは1.18(同:1.11~1.24)だった(NAFLD/NASH群2,187件、コントロール群13万4,001件)。より多くのリスク因子の情報を含む集団についての解析では、収縮期血圧、2型糖尿病、総コレステロール値、スタチン服用の有無、高血圧症で補正後、脳卒中発症に関するHRは1.04(同:0.99~1.09)だった(NAFLD/NASH群1,666件、コントロール群8万3,882件)。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)