解剖学的複雑度が低度~中等度の左冠動脈主幹部病変患者において、5年時点の全死因死亡・脳卒中・心筋梗塞の複合エンドポイントは、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)と冠動脈バイパス術(CABG)で有意差は確認されなかった。米国・マウントサイナイ医科大学のGregg W. Stone氏らが、左冠動脈主幹部病変の患者を対象に、エベロリムス溶出ステントによるPCIのCABGに対する追跡期間3年での非劣性を検証した国際多施設共同非盲検無作為化試験「EXCEL試験」の、最終5年アウトカムを報告した。左冠動脈主幹部病変患者において、現代の薬剤溶出ステントを用いたPCI後の、CABGと比較した長期アウトカムは明らかにされてはいなかった。NEJM誌オンライン版2019年9月28日号掲載の報告。
左冠動脈主幹部病変患者1,905例で、5年間評価
研究グループは2010年9月29日~2014年3月6日に、解剖学的複雑度が低度~中等度(各参加施設の評価)の左冠動脈主幹部病変患者1,905例を、フルオロポリマーベースのエベロリムス溶出コバルトクロムステント留置群(PCI群948例)、またはCABG群(957例)に無作為に割り付け追跡評価した。
主要評価項目は、全死因死亡・脳卒中・心筋梗塞の複合エンドポイント。intention-to-treat集団を対象に、ロジスティック回帰分析を用いて解析した。
複合エンドポイント、心血管死および心筋梗塞の発生に両群で有意差なし、ただしPCIは全死因死亡が多く、脳血管イベントは少ない
5年時点で、主要評価項目である複合エンドポイントのイベント発生率はPCI群22.0%、CABG群19.2%であった(群間差:2.8ポイント、95%信頼区間[CI]:-0.9~6.5、p=0.13)。
全死因死亡の発生は、PCI群がCABG群よりも高率であった(13.0% vs.9.9%、群間差:3.1ポイント[95%CI:0.2~6.1])。一方、心血管死(definite)(5.0% vs.4.5%、0.5ポイント[-1.4~2.5])、および心筋梗塞(10.6% vs.9.1%、1.4ポイント[-1.3~4.2])の発生は両群で有意差はなかった。脳卒中の発生は、両群で有意差はなかったが(2.9% vs.3.7%、-0.8ポイント[-2.4~0.9])、全脳血管イベントはPCI群がCABG群よりも低率であった(3.3% vs.5.2%、-1.9ポイント[-3.8~0])。
虚血による血行再建術は、PCI群がCABG群よりも高頻度であった(16.9% vs.10.0%、6.9ポイント[3.7~10.0])。
著者は研究の限界として、非盲検試験であること、追跡期間が5年と限られていたことなどを挙げたうえで、「PCIおよびCABGの長期的な安全性プロファイルを明らかにするためには、10年あるいはそれ以上の追跡調査が必要である」と述べている。
(医学ライター 吉尾 幸恵)