降圧治療の単剤療法を開始する際、サイアザイド(THZ)系/THZ系類似利尿薬はACE阻害薬に比べて優れており、非ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬は、その他の第1選択薬4クラスの降圧薬に比べ有効性が劣ることが、米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校のMarc A. Suchard氏らが行った系統的な国際的大規模解析の結果、示された。残余交絡や出版バイアスなども補正した包括的フレームワークを開発し、米国、日本、韓国などの490万例の患者データを解析して明らかにしたもので、その他の第1選択薬については、現行ガイドラインに合わせて降圧治療の単剤療法を開始した場合の有効性は同等であったという。高血圧に対する至適な単剤療法については曖昧なままで、ガイドラインでは、並存疾患がない場合はあらゆる主要な薬剤を第1選択薬に推奨されている。この選択肢について無作為化試験では精錬がされていなかった。Lancet誌オンライン版2019年10月24日号掲載の報告。
高血圧の第1選択薬による治療の有効性と安全性に関する55のアウトカムを比較
研究グループは、数百万の患者の観察データを含む多くの薬剤の有効性アウトカムおよび安全性評価を比較可能とする、残余交絡、出版バイアス、p値ハッキングなどを最小限に補正したリアルワールドの包括的フレームワークを開発した。同フレームワークを用いて、6つの診療報酬請求データベースと、3つの電子診療録データベースについてシステマティックに解析を行い、高血圧の第1選択薬の降圧薬について治療の有効性と安全性に関する55のアウトカムを比較した。
有効性に関する主要アウトカムは3つ(急性心筋梗塞、心不全による入院、脳卒中)、副次アウトカムは6つ、安全性に関するアウトカムは46で、相対リスクを算出して比較した。
高血圧の第1選択薬のうち、THZ系利尿薬はACE阻害薬に比べ良好
患者データ490万例の解析において、全クラスおよびアウトカムを比較した2万2,000の補正後・傾向スコア補正後ハザード比を得た。
高血圧の第1選択薬による単剤療法を開始する際、ほとんどの比較推算値は治療薬クラス間に差は認められないことを示すものだった。しかし、THZ系/THZ系類似利尿薬は、ACE阻害薬に比べ、主要有効性アウトカムが有意に高かった。初回治療におけるリスクは、急性心筋梗塞のハザード比(HR)0.84(95%信頼区間[CI]:0.75~0.95、p=0.01)、心不全による入院が0.83(0.74~0.95、p=0.01)、脳卒中が0.83(0.74~0.95、p=0.01)だった。安全性プロファイルも、THZ系/THZ系類似利尿薬はACE阻害薬よりも良好だった。
また、非ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬の有効性は、その他の高血圧の第1選択薬4クラスの降圧薬(THZ系/THZ系類似利尿薬、ARB、ACE阻害薬、ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬)に比べ有効性は有意に劣っていた。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)