経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)に成功した経口投与による抗凝固療法の適応のない患者に対し、直接作用型第Xa因子阻害経口抗凝固薬リバーロキサバン(10mg/日)を含む治療戦略は、アスピリンをベースとした抗血小板薬の治療戦略に比べ、死亡または血栓塞栓症の複合リスクが有意に高く、出血リスクも高いことが明らかにされた。米国・マウントサイナイ医科大学のGeorge D. Dangas氏らが、1,644例を対象に行った無作為化比較試験の結果で、NEJM誌オンライン版2019年11月16日号で発表した。リバーロキサバンがTAVR後の血栓塞栓症イベントを予防可能かどうかは明らかにされていなかった。
リバーロキサバンとアスピリンをそれぞれ投与
研究グループは、経口投与による抗凝固療法の適応のないTAVRに成功した患者1,644例を無作為に2群に分け、一方にはリバーロキサバン10mg/日(当初3ヵ月はアスピリン75~100mg/日と併用)(リバーロキサバン群)を、もう一方にはアスピリン75~100mg/日(当初3ヵ月はクロピドグレル75mg/日と併用)(抗血小板薬群)を投与した。
有効性の主要アウトカムは、死亡または血栓塞栓症イベントの複合。安全性の主要アウトカムは、多量で活動や動作障害を引き起こす出血または命に関わる出血だった。
死亡・血栓塞栓症の発生率、リバーロキサバン群9.8/100人年
中央値17ヵ月後において、死亡または初回血栓塞栓症イベントの発生(intention-to-treat解析)は、リバーロキサバン群105例、抗血小板薬群78例で認められた(発生率はそれぞれ9.8/100人年、7.2/100人年)。リバーロキサバン群の同発生リスクは抗血小板薬群の1.35倍だった(ハザード比[HR]:1.35、95%信頼区間[CI]:1.01~1.81、p=0.04)。
多量で活動や動作障害を引き起こす/命に関わる出血の発生は、リバーロキサバン群46例、抗血小板薬群31例で認められた(発生率はそれぞれ4.3/100人年、2.8/100人年、HR:1.50、95%CI:0.95~2.37、p=0.08)。
なお死亡は、リバーロキサバン群で64例、抗血小板薬群38例だった(発生率はそれぞれ5.8/100人年、3.4/100人年、HR:1.69、95%CI:1.13~2.53)。
今回の試験は、安全性への懸念から予定より早期に中止されている。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)