米国・ハーバード公衆衛生大学院のMing Ding氏らは、3件の前向きコホート研究において乳製品の摂取量と全死亡および死因別死亡との関連を検証し、乳製品の総摂取量と死亡リスクに逆相関は確認されず、乳製品の健康への影響は代用の類似食品に依存する可能性があることを報告した。また、「わずかだががん死亡率の上昇が、有意ではないものの乳製品摂取と関連がみられており、さらなる検証が必要である」とまとめている。これまで、乳製品摂取と2型糖尿病、心血管疾患、がんなどさまざまな健康アウトカムとの関連が広く検証されているが、多くの研究で明らかな有益性あるいは有害性は示されていない。さらに、前向きコホート研究での乳製品摂取と死亡との関連に関するエビデンスは限定的であった。BMJ誌2019年11月27日号掲載の報告。
米国の大規模コホート研究3件(女性約17万人、男性約5万人)について解析
研究グループは、女性および男性における乳製品の摂取と全死亡および死因別死亡リスクとの関連を調べる目的で、米国で実施された3つの前向きコホート研究「Nurses' Health Study(NHS)」「Nurses' Health Study II(NHS II)」「Health Professionals Follow-up Study(HPFS)」を用い、ベースラインで心血管疾患およびがんを有していない女性16万8,153人と男性4万9,602人について解析した。
参加者は、乳製品の摂取について食事摂取頻度調査票(Food Frequency Questionnaire:FFQ)を用いて、NHSでは1984年と1986年以降は4年ごとに、NHS IIおよびHPFSではそれぞれ1989年および1986年から4年ごとに調査を受けていた。
主要評価項目は、国民死亡記録(national death index)、州生命記録(state vital records)、または家族および郵送による報告によって2016年12月31日までに確認された死亡とした。
Cox比例ハザード回帰モデルを用いて、乳製品の摂取量と死亡リスクとの関連を解析した。多変量解析では、心血管疾患およびがんの家族歴、身体活動、食事パターン(代替健康食指数2010)、総エネルギー摂取量、喫煙状況、アルコール摂取量、閉経状態(女性のみ)、閉経後のホルモン剤使用(女性のみ)に関して補正を行い評価した。
解析は、各コホートで個別に実施した後、固定効果モデルを用いて統合・評価した。
乳製品摂取量と死亡リスクに逆相関は認められず
追跡期間最大32年間で、心血管死1万2,143例、がん死1万5,120例を含む計5万1,438例の死亡が確認された。
多変量解析で統合した全死亡のハザード比(HR)は、乳製品摂取量が最低の第1群(平均0.8サービング/日)に対して、第2群(平均1.5サービング/日)で0.98(95%信頼区間[CI]:0.96~1.01)、第3群(平均2.0サービング/日)で1.00(0.97~1.03)、第4群(平均2.8サービング/日)で1.02(0.99~1.05)、最高の第5群(平均4.2サービング/日)で1.07(1.04~1.10)であった(傾向のp<0.001)。
心血管疾患死のHRは第1群に対して、第2群0.97(95%CI:0.91~1.03)、第3群0.97(0.92~1.03)、第4群0.96(0.90~1.02)、第5群は1.02(0.95~1.08)であった(傾向のp=0.49)。
がん死のHRは第1群に対して、第2群0.95(95%CI:0.90~1.00)、第3群1.00(0.94~1.05)、第4群1.04(0.98~1.09)、第5群は1.05(0.99~1.11)であった(傾向のp=0.003)。
乳製品の種類別では、全乳の摂取量増加は、全死亡(0.5サービング/日増えるごとのHR:1.11、95%CI:1.09~1.14、傾向のp<0.001)、心血管死(同1.09、95%CI:1.03~1.15、傾向のp=0.001)およびがん死(同1.11、95%CI:1.06~1.17、傾向のp<0.001)のリスク上昇と有意に関連していた。
代替食品の解析で、乳製品の代わりにナッツ、豆類、全粒穀物を摂取した場合は死亡リスク低下と関連していたが、赤身および加工肉の摂取は死亡リスク上昇と関連していた。
(医学ライター 吉尾 幸恵)