AIによる大腸がん転帰の予測マーカーを開発/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2020/02/17

 

 ノルウェー・オスロ大学病院のOle-Johan Skrede氏らは、ディープラーニング(深層学習)を用いて、従来の病理組織画像から大腸がんの転帰を予測するバイオマーカー(DoMore-v1-CRC)を開発し、その臨床的有用性を確認した。研究の成果は、Lancet誌2020年2月1日号に掲載された。早期大腸がん患者を層別化して補助療法を適切に選択できるようにするには、より優れた予後マーカーが必要とされる。この研究で確立されたマーカーは、StageII/IIIの患者を十分に明確な予後グループに層別化した。これにより、きわめて低リスクのグループの治療を回避し、より強力な治療レジメンから利益を得る患者を特定することで、補助療法の選択の指針として有用となる可能性があるという。

1,200万枚以上の従来画像を使用

 研究グループは、深層学習を用いて、原発性大腸がんの切除後の患者転帰を予測するバイオマーカーを開発する目的で、トレーニングコホート、チューニングコホート、試験コホート、検証コホートにおいて検討を行った(Research Council of Norwayの助成による)。

 対象は、切除可能な腫瘍(StageI~III)を有する患者であった。従来のHE染色されたホルマリン固定パラフィン包埋腫瘍組織切片をスキャンした。

 4つのコホート(ノルウェーの2つと英国の2つ)から、明らかに転帰が良好または不良な腫瘍を有する患者の1,200万枚以上に及ぶ組織病理画像を用いて、合計10個の畳み込みニューラルネットワーク(CNN)をトレーニングした。10個のネットワークを統合し、転帰が不明な患者において予後バイオマーカーを確定した。

 確立されたマーカーは、英国で作製された920例(試験コホート)のスライドでテストされた。次いで、ノルウェーで作製されたスライドを用い、事前に規定されたプロトコールに準拠して、カペシタビンで治療された1,122例(検証コホート)で検証が行われた。主要転帰は、がん特異的生存とした。

多変量解析でも、強力な予測能が保持

 ノルウェーと英国の4つのコホートから、転帰(良好、不良)が明らかな828例(年齢中央値69歳、女性49%)を選出し、確実な真値(ground truth)を得るためのトレーニングコホートとして使用した。1,645例(70歳、42%)は転帰が不明であり、チューニングコホートとして用いた。

 確立されたバイオマーカー(DoMore-v1-CRC)は、検証コホート(1,122例、年齢中央値65歳、女性43%)において、がん特異的生存の優れた予測能を示した。不明な予後と良好な予後のハザード比(HR)は1.89(95%信頼区間[CI]:1.14~3.15)であり、不良な予後と良好な予後のHRは3.84(2.72~5.43、p<0.0001)であった。

 また、同じコホートの単変量解析で確立された予後マーカー(pN stage、pT stage、リンパ管浸潤、静脈血管浸潤)で補正した多変量解析でも、強力な予測能が保持されていた(不明な予後と良好な予後のHR:1.56、95%CI:0.92~2.65、p=0.10、不良な予後と良好な予後のHR:3.04、2.07~4.47、p<0.0001)。

 DoMore-v1-CRCによる良好な予後の3年がん特異的生存を、不明/不良な予後と比較した場合の感度は52%(95%CI:41~63)、特異度は78%(75~81)、陽性適中度は19%(14~25)、陰性適中度は94%(92~96)、正確に分類された患者の割合(accuracy)は76%(73~79)であった。同様に、良好/不明な予後を不良な予後と比較した場合は、それぞれ69%(58~78)、66%(63~69)、17%(13~21)、96%(94~97)、67%(63~69)だった。

 著者は、「深層学習は、従来の組織病理画像から直接的に、患者転帰を自動的に予測するバイオマーカーの開発に使用可能である。大腸がんでは、このマーカーは、最新のがん治療を受けた大規模な患者集団の解析において、臨床的に有用な予後マーカーであることが示された」としている。

(医学ライター 菅野 守)