HIVリザーバー(潜伏感染細胞)に対するkick and kill法は、抗レトロウイルス療法(ART)単独と比較して有意な効果は確認されなかった。英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのSarah Fidler氏らが、同国6施設で実施したART+kick and kill法の有効性を検証する多施設共同非盲検無作為化第II相試験「RIVER試験」の結果を報告した。ARTではHIV潜伏感染細胞が長期に残存するため、HIV感染症を完全に治癒させることはできない。そこで、潜伏感染細胞でのHIVの転写を誘導してHIVを再活性化させ、HIV潜伏感染細胞を死滅させようというkick and kill法がHIV治療戦略として期待されていた。Lancet誌オンライン版2020年2月18日号掲載の報告。
ART単独vs.ART+V+Vでkick and kill法の有効性を比較
RIVER試験の対象は、過去6ヵ月以内にHIV陽性と確認され確定診断後1ヵ月以内にARTを開始した18~60歳の男性患者で、ART単独群と、ART+ヒストン脱アセチル化酵素阻害薬ボリノスタット+抗HIVワクチン2種(ChAdV63.HIVconsvおよびMVA.HIVconsvによるプライムブースト)のART+V+V群に無作為に割り付けた。
主要評価項目は、無作為化後16週および18週時における末梢血CD4陽性T細胞中のHIV DNA量であった。
2015年6月14日~2017年7月11日の期間に、計60例が無作為に割り付けられ(ART単独群30例、ART+V+V群30例)、全例が試験を完遂した。
ART単独とkick and kill法でHIV DNA量に有意差なし
無作為化後16週および18週時における平均HIV DNA量(CD4陽性T細胞100万個当たり)は、ART単独群で3.02 log
10コピー、ART+V+V群で3.06 log
10コピーであり、両群間に有意差は認められなかった(平均群間差:0.04 log
10コピー、95%信頼区間[CI]:-0.03~0.11、p=0.26)。
治療に関連した重篤な有害事象は確認されなかった。
なお、著者は「今回の結果は、kick and kill法が間違っていることを証明したわけではない。今後は、“kick”と“kill”の両方の薬剤を増強し、さらなる研究が必要である」とまとめている。
(医学ライター 吉尾 幸恵)