世界のICU患者、1日の感染症有病率は50%以上/JAMA

世界88ヵ国の同じ1日における集中治療室(ICU)入室患者の感染症有病率は54%と高く、その後の院内死亡率は30%に達し、死亡リスクも実質的に高率であることが、ベルギー・エラスム病院のJean-Louis Vincent氏らが行った点有病率調査「EPIC III試験」で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2020年3月24日号に掲載された。ICU入室患者は感染症の頻度が高い。感染症の種類、原因となる病原菌、アウトカムに関する情報は、予防や診断、治療、医療資源配分の施策の策定に役立ち、介入試験のデザインの一助となる可能性があるという。同氏らは、これまでに、同様のデザインに基づく研究(EPIC試験[1995年]、EPIC II試験[2009年])の結果を報告している。
88ヵ国1,150施設で、24時間の点有病率を調査
研究グループは、88ヵ国1,150施設の参加の下、世界中のICUにおける感染症の発生とそのアウトカム、および利用可能な医療資源に関する情報を得る目的で、24時間の点有病率を調査する観察横断研究を行った。解析には、2017年9月13日午前8時(現地時間)から24時間の期間に、ICUで治療を受けたすべての成人(年齢18歳以上)患者が含まれた。患者の除外基準は設けなかった。最終フォローアップ日は2017年11月13日だった。
主要アウトカムは、感染症有病率、抗菌薬投与(横断的デザイン)、院内全死因死亡(縦断的デザイン)とした。
抗菌薬投与率は70%、VREは死亡率が2倍以上
1万5,202例(平均年齢61.1[SD 17.3]歳、男性9,181例[60.4%])が解析の対象となった。試験当日に、44%が侵襲的機械換気、28%が昇圧薬治療、11%は腎代替療法を要した。試験開始前のICU入室期間中央値は3日(IQR:1~10)、総ICU入室期間中央値は10日(3~28)だった。感染症のデータは1万5,165例(99.8%)で得られた。ICU感染1,760例(22%)を含め、感染症疑い/確定例は8,135例(54%)であった。1万640例(70%)が1つ以上の抗菌薬の投与を受けた。このうち28%が予防的投与、51%は治療的投与で、それぞれセファロスポリン系(51%)およびペニシリン系(36%)の抗菌薬が最も多かった。
地域別の感染症疑い/確定例の割合には、オーストララシアの43%(141/328例)からアジア/中東地域の60%(1,892/3,150例)までの幅が認められた。また、感染症疑い/確定例8,135例のうち、5,259例(65%)が少なくとも1回の微生物培養で陽性を示した。このうち3,540例(67%)がグラム陰性菌、1,946例(37%)がグラム陽性菌、864例(16%)は真菌であった。
感染症疑い/確定例の院内死亡率は30%(2,404/7,936例)であった。ICU感染は、市中感染に比べ院内死亡リスクが高かった(オッズ比[OR]:1.32、95%信頼区間[CI]:1.10~1.60、p=0.003)。
また、抗菌薬耐性菌のうち、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)(2.41、1.43~4.06、p=0.001)、第3世代セファロスポリン系およびカルバペネム系抗菌薬を含むβ-ラクタム系抗菌薬に耐性のクレブシエラ属(1.29、1.02~1.63、p=0.03)、カルバペネム系抗菌薬耐性アシネトバクター属(1.40、1.08~1.81、p=0.01)は、他の菌による感染症と比較して死亡リスクが高かった。
著者は、「今回の感染症疑い/確定例の割合(54%)は、EPIC試験(45%、1992年に評価)およびEPIC II試験(51%、2007年に評価)に比べ高かった。プロトコルの変更や技術的な改善による検出率向上への影響は除外できないが、培養陽性例の割合はEPIC II試験よりも低かった(65% vs.70%)。ICU感染例の割合(22%)はEPIC試験(21%)と同等だった」としている。
(医学ライター 菅野 守)
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