左室駆出率(LVEF)が低下したハイリスクの心不全患者に対し、新しい経口可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激薬vericiguatの投与はプラセボと比較して、心血管死または心不全による入院の複合イベントリスクを有意に低下することが示された。カナダ・アルバータ大学のPaul W. Armstrong氏らが、5,050例を対象に行った第III相プラセボ対照無作為化二重盲検試験の結果で、NEJM誌オンライン版2020年3月28日号で発表した。LVEFが低下し直近に入院または利尿薬静注を受ける心不全患者におけるvericiguatの有効性は明らかになっていなかった。
NYHA心機能分類II~IV、LVEF 45%未満を対象に試験
研究グループは、NYHA心機能分類II~IVの慢性心不全でLVEF 45%未満の患者5,050例を対象に試験を行った。
被験者を無作為に2群に分け、ガイドラインに基づく薬物治療に加え、一方にはvericiguat(目標用量1日1回10mg)を、もう一方にはプラセボをそれぞれ投与した。
主要アウトカムは、心血管死または心不全による初回入院の複合とした。
心血管死・心不全入院リスク、vericiguat群で0.90倍に
追跡期間中央値10.8ヵ月において、主要アウトカムの発生は、vericiguat群897/2,526例(35.5%)、プラセボ群972/2,524例(38.5%)だった(ハザード比[HR]:0.90、95%信頼区間[CI]:0.82~0.98、p=0.02)。
心不全による入院は、vericiguat群27.4%(691例)、プラセボ群29.6%(747例)であり(HR:0.90、95%CI:0.81~1.00)、心血管死はそれぞれ16.4%(414例)、17.5%(441例)で(同:0.93、0.81~1.06)、いずれも有意差はなかった。
一方、全死因死亡または心不全による入院の複合は、それぞれ37.9%(957例)、40.9%(1,032例)で、vericiguat群で低率だった(HR:0.90、95%CI:0.83~0.98、p=0.02)。
症候性の低血圧症が、vericiguat群9.1%、プラセボ群7.9%で(p=0.12)、また、失神がそれぞれ4.0%、3.5%で発生が報告された(p=0.30)。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)