下肢血行再建術を受けた末梢動脈疾患(PAD)患者において、リバーロキサバン+アスピリン併用療法はアスピリン単独療法と比較して、急性下肢虚血・血管疾患による大切断・心筋梗塞・虚血性脳卒中・心血管死の複合エンドポイントの発生率を有意に抑制したことが報告された。ただし、Thrombolysis in Myocardial Infarction(TIMI)分類による大出血の発生率は両群間で有意差はなく、国際血栓止血学会(ISTH)分類による大出血の発生率は、アスピリン単独療法と比較してリバーロキサバン+アスピリン併用療法で有意に上昇した。米国・Colorado Prevention Center(CPC)Clinical ResearchのMarc P. Bonaca氏らが、日本を含む世界34ヵ国の542施設で実施した第III相二重盲検比較試験「VOYAGER PAD試験」の結果を報告した。下肢血行再建術を受けたPAD患者は主要有害下肢/心血管イベントのリスクが高いが、このような患者におけるリバーロキサバンの有効性と安全性は不明であった。NEJM誌オンライン版2020年3月28日号掲載の報告。
主要有害下肢/心血管イベントと大出血の発生を比較
研究グループは2015年8月~2018年1月の期間に、50歳以上で症状があり画像所見および血行動態的に下肢PADと診断され、過去10日以内に下肢血行再建術が成功した患者6,564例を、リバーロキサバン(2.5mg 1日2回)+アスピリン(100mg 1日1回)群(リバーロキサバン併用群:3,286例)またはプラセボ+アスピリン(100mg 1日1回)群(アスピリン単独群:3,278例)に無作為に割り付け追跡評価した。
有効性の主要評価項目は、急性下肢虚血・血管疾患による大切断・心筋梗塞・虚血性脳卒中・心血管死の複合エンドポイント。安全性の主要評価項目はTIMI分類による大出血、副次評価項目はISTH分類による大出血であった。
リバーロキサバン併用で、主要有害下肢/心血管イベントリスクは有意に低下
追跡期間中央値28ヵ月において、有効性の主要評価項目であるイベントはリバーロキサバン併用群で508例、アスピリン単独群で584例に確認され、3年時の複合エンドポイント発生率(Kaplan-Meier推定値)はそれぞれ17.3%および19.9%であった(ハザード比[HR]:0.85、95%信頼区間[CI]:0.76~0.96、p=0.009)。
TIMI分類による大出血は、リバーロキサバン併用群で62例、アスピリン単独群で44例に発生した(3年時の発生率[Kaplan-Meier推定値]:2.65%、1.87%)(HR:1.43、95%CI:0.97~2.10、p=0.07)。また、ISTH分類による大出血は、リバーロキサバン併用群140例、アスピリン単独群100例に確認された(3年時の発生率[Kaplan-Meier推定値]:5.94%、4.06%)(HR:1.42、95%CI:1.10~1.84、p=0.007)。
なお、リバーロキサバン併用群で1,080例(33.2%)、アスピリン単独群で1,011例(31.1%)が早期に治療を中止した。著者は、早期治療中止例の割合が両群間でバランスは取れていたものの、予想より高かったことを研究の限界として挙げている。
(医学ライター 吉尾 幸恵)