米国の全国的なClostridioides difficile感染症と関連入院の負担は、2011年から2017年にかけて減少しており、これは主に医療関連感染(health care-associated infections)の低下によることが、米国疾病管理予防センター(CDC)のAlice Y. Guh氏ら新興感染症プログラム(EIP)Clostridioides difficile感染症作業部会の調査で明らかとなった。研究の成果は、NEJM誌2020年4月2日号に掲載された。米国では、C. difficile感染症の予防への取り組みが、医療領域全般で拡大し続けているが、これらの取り組みがC. difficile感染症の全国的な負担を低減しているかは不明とされる。
10州で、発生、再発、入院、院内死亡の負担を評価
研究グループは、米国における
C. difficile感染症の抑制の全国的な進捗状況を評価するために、EIPのデータを用いて、2011年から2017年までの
C. difficile感染症の負担と発生率の推定値および関連アウトカムの全国的な動向について検討した(米国CDCの助成による)。
C. difficile感染症のEIPでは、2017年、米国の10州35郡で1,200万人以上の調査を行い、このうち34郡が2011年以降の調査に参加した。
C. difficile感染症は、「1歳以上で、過去8週間に検査で
C. difficile陽性がなく、便検体で
C. difficileが陽性」と定義された。症例と国勢調査のサンプリングの重みを用いて、2011~17年の米国における
C. difficile感染症の発生、初回再発、入院、院内死亡の負担を推定した。
医療関連感染は、医療施設で発症した症例、または最近の医療施設への入院に関連する症例と定義し、それ以外はすべて市中感染に分類した。動向分析では、負の二項分布による重み付け変量切片モデルとロジスティック回帰モデルを用いて、他検査より高い核酸増幅検査(NAAT)の感度を補正した。
医療関連C. difficile感染症が年間6%低下、市中感染は変化なし
NAATで診断された
C. difficile感染症の割合は、2011年の55%から2016年には84%まで増加し、2017年には83%に低下した。また、米国の10ヵ所のEIP施設における
C. difficile感染症の症例数は、2011年が1万5,461件(10万人当たり140.92件、医療関連感染1万177件、市中感染5,284件)、2017年は1万5,512件(130.28件、7,973件、7,539件)であった。
NAAT使用の補正をしない全国的な
C. difficile感染症の負担の推定値は、2011年が47万6,400件(95%信頼区間[CI]:41万9,900~53万2,900)で、これは10万人当たり154.9件(95%CI:136.5~173.3)であり、2017年は46万2,100件(42万8,600~49万5,600)で、10万人当たり143.6件(133.2~154.0)だった。
NAATの使用を考慮した
C. difficile感染症の総負担の補正後推定値は、年間-4%(95%CI:-1~-6)変化し、2011年から2017年までに24%(6~36)減少した。このうち、医療関連
C. difficile感染症は年間-6%(-4~-9)変化し、2011年から2017年までに36%(24~54)低下したのに対し、市中
C. difficile感染症には変化が認められなかった(0%、-2~3)。
NAAT使用率を55%とすると、
C. difficile感染症の初回再発と院内死亡の負担の補正後推定値には有意な変化はみられなかった。これに対し、
C. difficile感染症による入院の負担の補正後推定値は、年間-4%(95%CI:-8~0)変化し、2011年から2017年までに24%(0~48)減少しており、医療関連感染の入院負担は年間-5%(-1~-9)変化したが、市中感染には有意な変化はなかった。
著者は、「CDCは、感染予防の実践や、医療領域全般における抗菌薬使用の改善に資する施策を進めている。また、1次予防におけるワクチン開発や腸内微生物叢などの革新的戦略の探索は、今後、
C. difficile感染症の負担削減をもたらす可能性がある」としている。
(医学ライター 菅野 守)