在胎期間は、早産児における新生児死亡(生後28日以内の死亡)の主要な決定因子だが、在胎期間とApgarスコアの組み合わせの新生児死亡リスクへの影響は明確でないという。スウェーデン・カロリンスカ研究所のSven Cnattingius氏らは、新生児死亡率は在胎期間が短くなるに従って実質的に増加することから、Apgarスコアに関連する新生児死亡率の絶対値の差(新生児の超過死亡数)は、早産児の在胎期間が短いほど増加するとの仮説を立て、検証を行った。その結果、出生5分後と10分後のApgarスコア、および5~10分後のスコアの変化は、5つに分けた在胎期間のすべての早産児で、新生児死亡率と関連することが示された。NEJM誌2020年7月2日号掲載の報告。
早産児の在胎期間別に、Apgarスコアと新生児死亡の関連を評価
研究グループは、スウェーデンの医療出生登録のデータを用いて、1992~2016年に出生した11万3,300例の早産児(在胎期間22週0日~36週6日)を同定し、解析を行った(スウェーデン保健・労働生活・福祉研究評議会などの助成による)。
これらの早産児は、在胎期間によって5つの群(22~24週、25~27週、28~31週、32~34週、35~36週)に層別化された。出生5分後と10分後のApgarスコア、および5~10分後までのApgarスコアの変化に基づき、新生児死亡の補正後の相対リスクと、新生児死亡率の絶対値の差(出生100人当たりの新生児の超過死亡数)を推算した。
Apgarスコアは、5つの要素(心拍数、呼吸、筋緊張、反射、皮膚色)から成り、それぞれ0~2点で評価する。最高点は10点で、点数が高いほど、新生児の身体の状態が良好であることを示す。
アウトカムは新生児死亡であり、出生から27日が終了するまでの死亡と定義された。
すべての在胎期間の早産児の健康評価に有用
新生児死亡は、11万3,300例中1,986例(1.8%)で発生した。新生児死亡率は、在胎期間が短いほど増加し、0.2%(在胎期間36週)~76.5%(在胎期間22週)の幅が認められた。また、新生児死亡率は、Apgarスコアが正常(7~10点)の範囲内であっても、5分後と10分後のApgarスコアが低下するに従って増加した。さらに、新生児死亡の補正後相対リスクは、在胎期間が短縮するに従って、また5分後、10分後のApgarスコアが低下するに従って実質的に増加した。
5つの在胎期間のすべてにおいて、低いApgarスコアは、新生児死亡の相対リスクが高いこと、および新生児死亡率の絶対値の差が大きいことと関連した。たとえば、在胎期間28~31週の出生児では、5分後のApgarスコアによる補正後の絶対値の差は、9~10点の出生児を参照群とした場合、0~1点で51.7(95%信頼区間[CI]:38.1~65.4)、2~3点で25.5(18.3~32.8)、4~6点で7.1(5.1~9.1)、7~8点で1.2(0.5~1.9)であった。
5分後から10分後までのApgarスコアの上昇は、この間のスコアに変動がない場合に比べ、新生児死亡率が低く、新生児死亡率の絶対値の差が小さかった。
著者は、「Apgarスコアは、すべての在胎期間の早産児において、新生児死亡のリスクに関して重要な情報をもたらすことが明らかとなった。これらの知見は、すべての在胎期間の早産児の健康の評価において、Apgarスコアは有用であるとの仮説を支持するものである」としている。
(医学ライター 菅野 守)