中等度の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者において、5日間のレムデシビル投与は標準的治療に比べ、11日目の臨床状態の改善が統計学的に有意であることが示された。10日間投与は標準的治療に比べ、同改善について統計学的な有意差は認められなかったという。ドイツ・ミュンヘン工科大学Rechts der Isar大学病院のChristoph D. Spinner氏らが、596例の入院患者を対象に行った国際共同無作為化試験で明らかにした。レムデシビルは、重症COVID-19患者を対象としたプラセボ対照試験で、臨床的ベネフィットがあることが示されているが、中等度の患者への効果は不明であった。なお、5日間投与で有意差が示された結果について著者は、「示された有意差の臨床的意義については不確実である」と述べている。JAMA誌オンライン版2020年8月21日号掲載の報告。
レムデシビル5日、10日投与の有効性を標準的治療と比較
研究グループは、レムデシビル5日間または10日間投与の投与開始後11日時点の臨床状態について、標準的治療と比較する非盲検無作為化試験を行った。
2020年3月15日~4月18日に、米国、欧州、アジアの105病院で、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染による中等度のCOVID-19肺炎を発症した入院患者を登録した。中等度COVID-19肺炎の定義は、X線所見による肺浸潤と室内気動脈血酸素飽和度94%超とした。
被験者を1対1対1の割合で無作為に3群に分け、レムデシビル(初回200mg/日、翌日から100mg/日)10日間静脈投与(197例)、同5日間静脈投与(199例)、標準的治療(200例)を、それぞれ実施した。
主要エンドポイントは、11日目の臨床状態で、7ポイント順序尺度(死亡[カテゴリー1]~退院[カテゴリー7])で評価した。レムデシビル群と標準的治療群の差については、比例オッズモデルを用いてオッズ比(OR)を求めた。
最終フォローアップは2020年5月20日であった。
レムデシビル10日投与群は標準的治療群と有意差なし、5日群で有意差
無作為化を受けた596例のうち、584例が試験を開始し、レムデシビル投与または標準的治療を受けた(年齢中央値57歳[四分位範囲:46~66]、女性227例[39%]、心血管疾患56%、高血圧症42%、糖尿病40%)。試験を完了したのは533例(91%)だった。レムデシビル5日群の投与期間中央値は5日、10日群は6日だった。
11日目の臨床状態は、レムデシビル5日群が標準的治療群に比べ良好で、7ポイント順序尺度で評価したORは1.65(95%信頼区間[CI]:1.09~2.48、p=0.02)だった。
一方で、レムデシビル10日群については、11日目の臨床状態は、標準的治療群と有意差は認められなかった(Wilcoxon rank sum検定のp=0.18)。
なお、28日目までに報告された死亡は、レムデシビル5日群2例(1%)、レムデシビル10日群3例(2%)、標準的治療群4例(2%)だった。また、レムデシビル治療群では標準的治療群と比べて、悪心(レムデシビル群10%vs.標準的治療群3%)、低カリウム血症(6% vs.2%)、頭痛(5% vs.3%)の発生頻度が高かった。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)