筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者へのフェニル酪酸ナトリウム+taurursodiol投与は、24週間の機能低下をプラセボよりも遅らせる可能性があることが、米国・ハーバード大学医学大学院のSabrina Paganoni氏らによる、ALS患者137例を対象とした多施設共同無作為化プラセボ対照二重盲検試験の結果、示された。フェニル酪酸ナトリウムおよびtaurursodiol投与は、実験モデルでは神経細胞死を抑制することが示されていたが、ALS患者に対する2剤併用の有効性と安全性は明らかになっていなかった。今回の試験では、副次アウトカムについて2群間で有意差は認められず、結果を踏まえて著者は、「有効性と安全性を評価するには、より長期かつ大規模な試験を行う必要がある」と述べている。NEJM誌2020年9月3日号掲載の報告。
24週間のALSFRS-Rスコア低下率を比較
研究グループは2017年6月~2019年9月にかけて、米国25ヵ所の医療機関を通じ、ALSの確定診断を受けた発症後18ヵ月以内の患者を登録して試験を行った。
被験者を無作為に2対1の割合で無作為に割り付け、一方にはフェニル酪酸ナトリウム-taurursodiolを投与(フェニル酪酸ナトリウム3g+taurursodiol 1gを1日1回3週間、その後は1日2回)、もう一方の群にはプラセボを投与した。
主要アウトカムは、24週間の「筋萎縮性側索硬化症機能評価スケール改訂版」(ALSFRS-R、0~48点でスコアが高いほど機能良好)の合計スコアの低下率だった。
副次アウトカムは、等尺性筋力・血漿中リン酸化軸索ニューロフィラメントHサブユニット濃度・静的肺活量それぞれの低下率と、死亡・気管切開・永続的人工呼吸器の使用までの期間、死亡・気管切開・永続的人工呼吸器の使用・入院までの期間だった。
スコア低下幅、プラセボ群-1.66点/月に対し実薬群-1.24点/月
ALS患者177例について試験適格スクリーニングを行い、137例をフェニル酪酸ナトリウム-taurursodiol群(89例)またはプラセボ群(48例)に無作為に割り付けた。
修正intention-to-treat解析の結果、ALSFRS-Rスコアの平均変化率は、プラセボ群-1.66点/月に対し、実薬群-1.24点/月だった(群間差:0.42点/月、95%信頼区間:0.03~0.81、p=0.03)。
副次アウトカムについては、2群間で有意差は認められなかった。実薬による有害事象は、主に消化器系に関連したものだった。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)