CAR-T細胞製剤liso-cel、再発・難治性大細胞型B細胞性リンパ腫でCR53%/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2020/10/07

 

 CD19を標的とする自家キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR-T細胞)製剤lisocabtagene maraleucel(liso-cel)は、さまざまな組織学的サブタイプや高リスクの病型を含む再発・難治性の大細胞型B細胞性リンパ腫患者の治療において、高い客観的奏効率をもたらし、重度のサイトカイン放出症候群や神経学的イベントの発生率は低いことが、米国・マサチューセッツ総合病院のJeremy S. Abramson氏らが行った「TRANSCEND NHL 001試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2020年9月19日号に掲載された。liso-celは、さまざまなサブタイプの再発・難治性大細胞型B細胞性リンパ腫で高い奏効率と持続的な寛解が報告されているが、高齢者や併存疾患を持つ患者、中枢神経リンパ腫などの高リスク集団のデータは十分でないという。

シームレス・デザインの多コホート試験で安全性と有効性を評価

 本研究は、米国の14のがんセンターが参加したシームレス・デザイン(seamless design)の多コホート試験であり、2016年1月11日~2019年7月5日の期間に、個々の患者のCART細胞を作製するための白血球アフェレーシスが実施された(Juno TherapeuticsとBristol-Myers Squibbの助成による)。

 対象は、年齢18歳以上の再発・難治性大細胞型B細胞性リンパ腫で、組織学的サブタイプとして、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫、MYCおよびBCL2BCL6の両方か一方の再構成を伴う高悪性度B細胞性リンパ腫(double-hitまたはtriple-hitリンパ腫)、インドレントリンパ腫から形質転換したびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫、原発性縦隔B細胞性リンパ腫、Grade3Bの濾胞性リンパ腫が含まれた。

 liso-celは、2つの組成(CD8CART細胞、CD4CART細胞)として連続的に投与され、被験者は4つの用量(50×106 CART細胞[レベル1]、50×106 CART細胞を2回[レベル1D]、100×106 CART細胞[レベル2]、150×106 CART細胞[レベル3])のうち1つを投与する群に割り付けられた。

 主要エンドポイントは、有害事象、用量制限毒性、客観的奏効率(Lugano基準で評価)とした。有効性の評価は、PETで確定され1回以上のliso-celの投与を受けたすべての患者を対象に、独立判定委員会によって行われた。

客観的奏効率73%、完全奏効率53%

 344例がCART細胞(liso-cel)を作製するための白血球アフェレーシスを受け、このうち269例が少なくとも1回のliso-celの投与を受けた。レベル1に45例、レベル1Dに6例、レベル2に177例、レベル3に41例が割り付けられた。

 全体の年齢中央値は63歳(IQR:54~70、範囲:18~86)、112例(42%)が65歳以上で、男性が65%であった。全身療法の前治療レジメン数中央値は3(IQR:2~4、範囲:1~8)で、260例(97%)が2ライン以上を受けていた。また、181例(67%)が化学療法抵抗性で、2次性中枢神経リンパ腫が7例(3%)含まれた。119例(44%)は、前治療で一度も完全奏効を達成していなかった。

 白血球アフェレーシスを受けた344例のフォローアップ期間中央値は18.8ヵ月(95%信頼区間[CI]:15.0~19.3)であった。全体として、liso-celの安全性と抗腫瘍活性には用量による差はなく、推奨至適用量は100×106 CART細胞(50×106 CD8CART細胞、50×106 CD4CART細胞)であった。

 有効性の評価は256例で行われた。このうち、客観的奏効は186例(73%、95%CI:66.8~78.0)で得られ、136例(53%、46.8~59.4)で完全奏効が達成された。
 頻度の高いGrade3以上の有害事象として、好中球減少が161例(60%)、貧血が101例(37%)、血小板減少が72例(27%)に認められた。また、サイトカイン放出症候群は113例(42%)、神経学的イベントは80例(30%)で発現し、このうちGrade3以上はそれぞれ6例(2%)および27例(10%)であった。用量制限毒性は9例(6%)でみられ、このうち1例(50×106 CART細胞)がびまん性肺胞傷害によって死亡した。最大耐用量は特定されなかった。
 著者は、「これらのデータは、65歳以上の高齢者や中等度の併存疾患を有するさまざまなサブタイプの高リスク大細胞型B細胞性リンパ腫患者の治療におけるCAR-T細胞療法の使用を支持するものである。現在、初回再発時の大細胞型B細胞性リンパ腫や他の再発・難治性のB細胞性腫瘍における評価が進められている」としている。

(医学ライター 菅野 守)