インドで行われた第II相多施設共同非盲検無作為化試験の結果、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)回復期患者の血漿を用いた治療は、COVID-19の重症化や全死因死亡の抑制と関連しないことが、インド・Indian Council of Medical ResearchのAnup Agarwal氏らにより報告された。2020年10月現在、COVID-19回復期血漿療法に関しては、複数の小規模ケースシリーズと1つの大規模観察試験(3万5,000例超)および3つの無作為化試験が発表されている。観察試験では臨床的有益性が示唆されたが、試験は早期に中止され、また死亡への有益性を確認することはできていなかった。BMJ誌2020年10月22日号掲載の報告。
回復期患者血漿200mLを24時間間隔で2回投与
研究グループは、インドの成人で中等度COVID-19患者への回復期血漿治療の有効性について検討した。2020年4月22日~7月14日に、インド国内39ヵ所の公的および民間病院で、COVID-19が確認された18歳以上の患者464例を対象に試験を行った。被験者は、室内気でPaO
2(動脈血酸素分圧)/FiO
2(吸入酸素濃度)が200~300mmHg、または呼吸数24/分超かつ酸素飽和度93%以下だった。
235例(介入群)に標準的治療+回復期患者血漿投与を、229例(対照群)に標準的治療のみを行った。介入群には、回復期血漿200mLを24時間間隔で2回投与。中和抗体の出現と値の測定は事前に規定されていなかったが、試験終了時に保存検体の解析が行われた。
主要アウトカムは、試験登録後28日時点における重症(PaO
2/FiO
2<100mmHg未満)への進行または全死因死亡の複合だった。
重症化・全死因死亡発生率は両群ともに18~19%と同等
試験登録後28日時点における主要複合アウトカムの発生は、介入群44例(19%)、対照群41例(18%)と両群で有意差はなかった(リスク差:0.008、95%信頼区間[CI]:-0.062~0.078)。リスク比は1.04(95%CI:0.71~1.54)だった。
結果を踏まえて著者は、「本試験は一般化可能性が高く、回復期血漿投与は検査体制が限られている現実の状況下で行われた」と述べるとともに、「回復期血漿投与を受ける側および提供する側双方の中和抗体価の先験的測定が、今後、COVID-19治療における回復期血漿の役割を明らかにする可能性はある」と提案している。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)