2型糖尿病と慢性腎臓病(CKD)(アルブミン尿の有無は問わない)が併存する患者の治療において、ナトリウム・グルコース共輸送体1/2(SGLT1/2)阻害薬sotagliflozinはプラセボに比べ、心血管死、心不全による入院、心不全による緊急受診の複合リスクを低下させるが、とくに注目すべき有害事象の頻度は高いことが、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のDeepak L. Bhatt氏らが行った「SCORED試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2020年11月16日号で報告された。糖尿病とCKDが併存すると、心不全や虚血性イベントのリスクがいっそう高まる。糖尿病の有無にかかわらず、CKD患者へのSGLT2阻害薬の使用を支持する無作為化試験のデータがあるが、これらの試験は患者選択基準で推定糸球体濾過量の低下に加え顕性アルブミン尿の発現を求めている。一方、CKDが併存する糖尿病患者の治療におけるsotagliflozinの有効性と安全性は十分に検討されていないという。
44ヵ国750施設が参加したプラセボ対照無作為化第III相試験
本研究は、CKDが併存する糖尿病患者におけるsotagliflozinの有効性と安全性を評価する二重盲検プラセボ対照無作為化第III相試験であり、44ヵ国750施設が参加し、2017年12月~2020年1月の期間に患者登録が行われた(SanofiとLexicon Pharmaceuticalsの助成による)。
対象は、年齢18歳以上、2型糖尿病(糖化ヘモグロビン値≧7%)で、CKD(推定糸球体濾過量25~60mL/分/1.73m
2)を伴い、心血管疾患のリスクを有する患者であり、アルブミン尿の有無は問われなかった。被験者は、標準治療に加え、sotagliflozin(200mg、1日1回)またはプラセボの投与を受ける群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。sotagliflozinは、許容されない副作用の発現がなければ400mg(1日1回)まで増量可とされた。
本試験は、目標イベント数に達する前に、資金不足で早期中止となった。主要エンドポイントは、早期中止決定時に、心血管死、心不全による入院、心不全による緊急受診の複合に変更された。
心血管死に差はない、変更前の複合主要エンドポイントは良好
1万584例が登録され、5,292例がsotagliflozin群(年齢中央値69歳[IQR:63~74]、女性44.3%)に、5,292例がプラセボ群(69歳[63~74]、45.5%)に割り付けられた。治療期間中央値は、それぞれ14.2ヵ月(IQR:10.3~18.9)および14.3ヵ月(10.3~18.9)で、追跡期間中央値は16ヵ月だった。
主要エンドポイントのイベント発生率は、sotagliflozin群が100人年当たり5.6件、プラセボ群は7.5件(ハザード比[HR]:0.74、95%信頼区間[CI]:0.63~0.88、p<0.001)であった。心不全による入院と心不全による緊急受診の複合の発生率は、sotagliflozin群が100人年当たり3.5件、プラセボ群は5.1件(0.67、0.55~0.82、p<0.001)であった。心血管死(2.2件vs.2.4件/100人年、0.90、0.73~1.12、p=0.35)には有意差が認められなかった。
変更前の複合主要エンドポイントである心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中の複合(HR:0.84、95%CI:0.72~0.99)および心血管死、心不全による入院の複合(0.77、0.66~0.91)は、いずれもsotagliflozin群で良好だった。
有害事象や治療中止の原因となったイベントの発生割合は両群間に差はなく、重篤な有害事象の発生割合も同程度であった(sotagliflozin群23.4%、プラセボ群25.2%)。sotagliflozin群はプラセボ群に比べ、とくに注目すべき有害事象のうち、下痢(8.5% vs.6.0%、p<0.001)、糖尿病性ケトアシドーシス(0.6% vs.0.3%、p=0.02)、性器真菌感染症(2.4% vs.0.9%、p<0.001)、体液量減少(5.3% vs.4.0%、p=0.003)の頻度が高かった。
著者は、「sotagliflozinの有効性と安全性を評価するには、さらに長期の検討を要する」としている。
(医学ライター 菅野 守)