中等症~重症の特発性肺線維症(IPF)について、コトリモキサゾール(ST合剤:スルファメトキサゾールとトリメトプリムの合剤)はプラセボと比較して、死亡・肺移植または予定外の初回入院までの期間の複合アウトカムの発生を低下しないことが、英国・イースト・アングリア大学のAndrew M. Wilson氏らによる検討で示された。IPFは予後不良で治療法が限られており、肺微生物叢の変化による肺への細菌負荷が死亡率に関連するとされている。先行の小規模無作為化試験においてST合剤投与による臨床アウトカムの改善および優れた費用対効果が示唆され、また探索的解析で健康関連のQOLや酸素必要量の改善、および試験プロトコールを順守した被験者における12ヵ月間の死亡率低下が示されていたが、生存ベネフィットのエビデンスは確定されていなかった。JAMA誌2020年12月8日号掲載の報告。
中等症~重症IPFへのST合剤の有効性、二重盲検プラセボ対照無作為化試験で評価
研究グループは、中等症~重症IPF患者におけるST合剤の有効性を確定する、二重盲検プラセボ対照並行群比較無作為化試験を行った。被験者は、IPFで息切れ症状(MRC息切れスケールスコア>1)と肺機能障害(努力肺活量[FVC]予測値≦75%)を有する患者で、英国の間質性肺疾患専門医療センター39ヵ所で、2015年4月(最初の患者が受診)~2019年4月(最後の患者のフォローアップ完了)に342例が試験に参加した。
被験者は、1日2回960mgのST合剤を服用する群(170例)または適合プラセボを服用する群(172例)に無作為に割り付けられ、最短12ヵ月間および最大42ヵ月間のフォローアップを受けた。また、全患者に1日1回5mgの経口葉酸が投与された。
主要アウトカムは、死亡(全死因)・肺移植・予定外の初回入院までの期間であった。副次アウトカムは15項目で、主要エンドポイントの呼吸関連イベントの各項目、肺機能(FVCおよび肺ガス交換能)、患者報告のアウトカム(MRC息切れスケール、5段階EQ-5D質問票、咳重症度、Leicester Cough Questionnaire[LCQ]、King's Brief Interstitial Lung Disease[KBILD]質問票スコア)などであった。
死亡・肺移植・予定外入院の複合アウトカムほか副次アウトカムも、有意差なし
無作為化を受けた342例(平均年齢71.3歳、女性46例[13%])において、283例(83%)が試験を完了した。フォローアップ期間中央値(四分位範囲)は1.02年(0.35~1.73)であった。
ST合剤群およびプラセボ群のイベント件数はそれぞれ、0.45(84例/186フォローアップ人年)、0.38(80例/209フォローアップ人年)で、ハザード比は1.2(95%信頼区間[CI]:0.9~1.6、p=0.32)であった。
その他のイベントアウトカム、肺機能、患者報告のアウトカムについても統計的有意差は認められなかった。有害事象は、ST合剤群696例(悪心89例、下痢52例、嘔吐28例、および発疹31例など)、プラセボ群640例(悪心67例、下痢84例、嘔吐20例、および発疹20例など)が報告された。
(ケアネット)