日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社は、神戸市立医療センター西市民病院との共同研究で特発性肺線維症(IPF)患者を診る医師とその患者を対象に「特発性肺線維症(IPF)診療における患者と医師の相互理解:わが国におけるIPF 患者と担当医師の意識調査」を行い、その結果を発表した。これはIPF を診療する医師とその患者に対する国内初となる意識調査であり、その結果、医師と患者との間には治療に対する認識のギャップが存在することが明らかになった。
IPFは、進行すると肺が膨らみにくくなり、咳や息切れの症状が出現、患者の死亡原因の約40%が急性憎悪による。同社の開発したニンテダニブは、2015年7月にIPFを効能・効果として製造販売承認を取得し、2019年12月に全身性強皮症に伴う間質性肺疾患に対して追加適応を取得し、治療に使用されている。
■調査概要
目的:IPF診療における患者と医師の認識の一致、不一致がどこにあるかを明らかにし、両者の相互理解を向上させるための有益な情報を提供する
調査対象(方式)
医師:66人(オンラインアンケート)
患者:158人(郵送留め置き方式)
■アンケート調査の結果概要
・患者は治療薬があることや治療費の助成制度に関する情報を診断時の重要な説明と捉えている
患者は、疾患の特性のほか、治療薬があること、治療費の助成制度に関する情報を診断時の重要な説明内容と捉えていた一方で、医師は疾患の特性や検査の説明を重視していたが、治療薬の有無や治療費の助成制度に関する情報については診断時の説明として、重要度の認識が低いという結果だった。
・医師が意図した通りに説明内容は患者に伝わっていない
「初期は無症状であっても進行する」、「急性憎悪により呼吸機能が急激に悪化し、予後に大きな影響を与える可能性があること」のように、多くの医師が説明したとする内容が、かならずしも患者の印象に残っていないこともあり、医師の意図した通りに説明内容が患者に伝わっていなかった。
・患者は早期に治療を開始し、今までと同じ生活をすることを重視
「早期に治療を始めること」や「通院治療で仕事や家事への影響が少なく、今までと同じ生活ができること」に関して、医師に比べ、患者でより重視しており、認識に顕著な差異が見られた。
・IPF と診断された患者は“不安”と“驚き”を感じ、その後インターネットで検索
IPF の診断を受けた際の気持ちとして、“不安”とする回答が最も多く、その次に“驚き”が多かった。また、診断を受けた後、患者の多くがパソコンやタブレット、スマートフォンを使って、自身で疾患について調べていた。その一方で、インターネットで得られるIPF に関する情報は不正確であったり、最新のものではないことも多く、情報収集には注意を要することから、IPF の診断を受けて不安を抱える患者に正確な情報提供を行っていくことが求められると考えられた。
(ケアネット 稲川 進)