膝OAの高強度筋トレ、1年半後のアウトカムは?/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2021/03/01

 

 変形性膝関節症(膝OA)の患者への介入として、高強度筋力トレーニングは低強度筋力トレーニングや注意制御と比較して、膝痛や膝関節圧縮力の長期的な改善効果をもたらさないことが、米国・ウェイクフォレスト大学のStephen P. Messier氏らが実施した「START試験」で示された。研究の詳細は、JAMA誌2021年2月16日号で報告された。大腿筋の筋力低下は、膝の痛みや変形性関節疾患の進行と関連するため、米国の診療ガイドラインは変形性膝関節症患者に筋力トレーニングを推奨している。高強度筋力トレーニングは、関節への圧迫力が大きいため変形性膝関節症の症状を悪化させる可能性があるものの、短期であれば安全で、高齢患者にも十分に忍容可能とされる。一方、長期の高強度の運動による筋力の向上は、変形性膝関節症の臨床アウトカムを改善する可能性も示唆されているという。

3群を比較する米国の単施設無作為化試験

 本研究は、18ヵ月間(長期)の高強度筋力トレーニングは低強度トレーニングや高度な注意制御と比較して、変形性膝関節症患者の膝痛や膝関節圧縮力を改善するかを評価する無作為化臨床試験であり、2012年7月~2016年2月の期間に米国の単施設(ウェイクフォレスト大学)で患者登録が行われた(米国国立関節炎・骨格筋・皮膚疾患研究所[NIAMS]などの助成による)。

 対象は、年齢50歳以上、BMIが20~45で、膝痛がみられ、X線所見で軽症~中等症の変形性膝関節症(Kellgren-Lawrenceスコア:2~3点)と診断された患者であった。被験者は、高強度筋力トレーニング、低強度筋力トレーニング、注意制御(対照)を受ける群に無作為に割り付けられた。

 筋力トレーニングは、1回につき5分の準備運動、40分のトレーニング、15分の整理運動から成り、週3回、18ヵ月間行われた。高強度群は、個々の運動の最大反復回数(RM)の75%を3セット、その8回反復を2週間行い、その後は2週ごとに、1RMの80%を3セット/8回反復、同85%/6回反復、同90%/4回反復を行い、9週目は強度を緩和して別の運動を行うとともに、個々の運動の新たな1RMを設定し、この9週の筋力トレーニングを8回(18ヵ月)繰り返した。低強度群は、同様の9週間のパターンで、1RMの30~40%の運動を3セット、15回反復した。対照群は、1回60分の研修(健康教育、社会的交流)を、2週ごとに6ヵ月間受け、以降は1ヵ月ごとに、合計24回受けた。

 主要アウトカムは、18ヵ月の時点におけるWestern Ontario McMaster Universities Osteoarthritis Index(WOMAC)膝痛スコア(0[最良]~20[最悪]点、臨床的に意義のある最小変化量[MCID]2点)および膝関節圧縮力(歩行中の脛骨の長軸に沿って生じる脛骨大腿骨の最大圧迫力、MCIDは不明)とした。

短期の評価では、低強度群で膝痛の改善が良好

 377例(平均年齢65歳、女性151例[40%])が登録され、320例(85%)が試験を完遂した。127例が高強度群、126例が低強度群、124例は対照群に割り付けられた。

 18ヵ月時の平均WOMAC膝痛スコアは、高強度群は5.1点であり、対照群の4.9点(補正後群間差:0.2点、95%信頼区間[CI]:-0.6~1.1、p=0.61)、および低強度群の4.4点(0.7、-0.1~1.6、p=0.08)と比較して、いずれも有意な差は認められなかった。

 膝関節圧縮力にも、高強度群と対照群(2,453N vs.2,512N、補正後群間差:-58N、95%CI:-282~165、p=0.61)、および高強度群と低強度群(2,453N vs.2,475N、-21N、-235~193、p=0.85)のいずれの比較においても有意差はみられなかった。

 6ヵ月(短期)の時点では、低強度群は高強度群に比べ、WOMAC膝痛スコア(高強度群5.6点vs.低強度群4.4点、補正後群間差:1.2点、95%CI:0.5~1.9、p=0.001)およびWOMAC機能障害スコア(20.8点vs.16.1点、4.8点、2.4~7.2、p<0.001)が有意に優れていた。膝関節圧縮力には有意差がなかった。

 重篤でない有害事象は87件(高強度群53件、低強度群30件、対照群4件)発生し、このうち29件が試験関連であった(20件、9件、0件)。頻度の高い有害事象として、体の痛みが20件(12件、7件、1件)、転倒が19件(11件、6件、2件)、筋挫傷が10件(8件、2件、0件)報告された。試験に関連しない重篤な有害事象は13件(5件、3件、5件)みられた。

 著者は、「これらの知見は、成人の変形性膝関節症患者への高強度筋力トレーニングを支持しない」とまとめ、「高強度群と対照群でアウトカムに差がなかった理由の1つとして、対照群で変形性膝関節症による痛みが33%(既報の試験では1~17%)と大幅に改善されたことが挙げられる」と指摘している。

(医学ライター 菅野 守)

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