HIV-1に感染した妊婦に対し、妊娠中に開始したドルテグラビル(DTG)含有レジメンは、エファビレンツ+エムトリシタビン+テノホビル ジソプロキシフマル酸塩レジメン(EFV/FTC/TDF)に対して、分娩時のウイルス学的有効性について優越性を示した。またDTG/FTC/テノホビル アラフェナミドフマル酸塩(TAF)レジメンは、有害妊娠アウトカムおよび新生児死亡が最も低頻度であった。米国・ブリガム&ウィメンズ病院のShahin Lockman氏らが、ボツワナ、ブラジル、インド、南アフリカ共和国、タンザニア、タイ、ウガンダ、米国およびジンバブエの9ヵ国22施設で実施した多施設共同無作為化非盲検第III相試験「IMPAACT 2010/VESTED試験」の結果を報告した。妊娠中の抗レトロウイルス療法(ART)は、母体の健康と周産期のHIV-1感染予防に重要であるが、妊婦に使用されるさまざまなレジメンの安全性と有効性に関するデータは不足していた。Lancet誌2021年4月3日号掲載の報告。
妊婦での3つのARTの有効性を評価
研究グループは、HIV-1感染が確認された18歳以上の妊婦(14~28週)を、DTG/FTC/TAF群(1日1回DTG 50mg+FTC 200mg/TAF 25mg合剤経口投与)、DTG/FTC/TDF群(1日1回DTG 50mg+FTC 200mg/TDF 300mg合剤経口投与)、またはEFV/FTC/TDF群(1日1回EFV 600mg/FTC 200mg/TDF 300mg合剤経口投与)のいずれかに、妊娠週数(14~18週、19~23週、24~28週)と国で層別化し、1対1対1の割合で無作為に割り付けた。
主要評価項目は、分娩時または分娩後14日以内のHIV-1 RNA 200コピー/mL未満の患者の割合で、事前に設定したDTG含有群vs.EFV含有群の非劣性マージンは-10%とした(優越性の検証は、事前に計画された副次解析で実施)。
主要安全性評価項目は、有害妊娠アウトカム(早産、低出生体重児、死産、自然流産)、母親または新生児におけるGrade3以上の有害事象の発生とした。
DTG含有レジメンはEFV含有レジメンよりウイルス学的に有効
2018年1月19日~2019年2月8日の期間で、妊婦643例が無作為化された(DTG/FTC/TAF群217例、DTG/FTC/TDF群215例、EFV/FTC/TDF群211例)。登録時点での妊娠週数中央値は21.9週(IQR:18.3~25.3)、HIV-1 RNA中央値は902.5コピー/mL(IQR:152.0~5,182.5、HIV-1 RNA 200コピー/mL未満の割合28%)であった。
分娩時にHIV-1 RNAが測定可能であった605例(94%)において、主要評価項目を達成したのはDTG含有群が405例中395例(98%)であったのに対し、EFV/FTC/TDF群は200例中182例(91%)であった(推定群間差:6.5%、95%信頼区間[CI]:2.0~10.7、p=0.0052)。
有害妊娠アウトカムは、DTG/FTC/TAF群(216例中52例、24%)のほうが、DTG/FTC/TDF群(213例中70例33%)(推定群間差:-8.8%、95%CI:-17.3~-0.3、p=0.043)、およびEFV/FTC/TDF群(211例中69例33%)(推定群間差:-8.6%、95%CI:-17.1~-0.1、p=0.047)より有意に少なかった。
Grade3以上の有害事象が確認された母親または新生児の割合は、3群で違いはなかった。早産は、DTG/FTC/TAF群(208例中12例、6%)が、EFV/FTC/TDF群(207例中25例、12%)より有意に低率だった(推定群間差:-6.3%、95%CI:-11.8~-0.9、p=0.023)。新生児死亡率は、EFV/FTC/TDF群(207例中10例、5%)が、DTG/FTC/TAF群(208例中2例、1%、p=0.019)やDTG/FTC/TDF群(202例中3例、2%、p=0.050)より、有意に高率であった。
(医学ライター 吉尾 幸恵)