治療の選択肢が限られた多剤耐性ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1)感染患者において、fostemsavirはプラセボと比較して投与開始後8日間のHIV-1 RNA量を有意に減少し、その有効性は48週まで持続することが認められた。米国・イェール大学医学大学院のMichael Kozal氏らが、23ヵ国で実施中の第III相試験の結果を報告した。fostemsavirは、画期的医薬品(ファーストインクラス)として開発中のHIV-1接着阻害薬temsavirのプロドラッグである。複数の抗ウイルス療法を受け治療の選択肢が限られているHIV-1感染患者に対する、新しい作用機序を持つ新クラスの抗レトロウイルス薬が必要とされていた。NEJM誌2020年3月26日号掲載の報告。
多剤耐性HIV-1感染患者約370例を対象に、2つのコホートで評価
研究グループは、多剤耐性HIV-1感染患者を、残された治療選択肢に従って2つのコホートに登録した。第1コホートでは、治療選択肢として少なくとも1剤以上の承認された抗レトロウイルス薬(1クラス以上2クラス以下)を有する患者を、失敗したレジメンにfostemsavir(600mgを1日2回)またはプラセボを8日間追加する群に3対1の割合で割り付け、その後は非盲検下でfostemsavir+最適基礎療法を行った(無作為化コホート)。
第2コホートは、対象を抗レトロウイルス薬の選択肢が残されていない患者とし、非盲検下でfostemsavir+最適基礎療法を1日目から開始した(非無作為化コホート)。
主要評価項目は、無作為化コホートにおけるHIV-1 RNA量の1日目から8日目までの平均変化量とした。
fostemsavir追加で8日間のHIV-1 RNA量が有意に減少
解析対象は、治療を受けた無作為化コホート272例、非無作為化コホート99例の計371例であった。
8日時点で、HIV-1 RNA量の平均減少量は、fostemsavir群で0.79 log
10コピー/mL、プラセボ群で0.17 log
10コピー/mLであった(p<0.001)。48週時点でのウイルス陰性化率(HIV-1 RNA量<40コピー/mL)は、無作為化コホートで54%、非無作為化コホートで38%であり、CD4陽性T細胞数の平均増加量はそれぞれ139/mm
3および64/mm
3であった。
fostemsavir投与中止に至った有害事象は、7%の患者で確認された。
無作為化コホートでは、47例でウイルス学的失敗が確認され、そのうち20例(43%)で糖蛋白120(gp120)の置換が認められた。
(医学ライター 吉尾 幸恵)