特発性肺線維症(IPF)成人患者において、通常治療にコトリモキサゾール(ST合剤)またはドキシサイクリンを追加しても、通常治療単独と比較して呼吸器関連入院または全死因死亡までの期間に有意な改善は認められないことが、米国・New York Presbyterian Hospital/Weill Cornell MedicineのFernando J. Martinez氏らによる実用的な無作為化非盲検臨床試験「CleanUP-IPF試験」で示された。IPFは、肺微生物叢の変化が病勢進行と関連しており、線維化を伴う間質性肺疾患患者においてST合剤がアウトカムを改善することや、ドキシサイクリンはIPF患者の予後を改善し、メタロプロテアーゼを阻害することが予備的研究で示唆されていた。今回の結果を受けて著者は、「IPFの基礎にある病態に対する抗菌薬治療は支持されない」とまとめている。JAMA誌2021年5月11日号掲載の報告。
ST合剤またはドキシサイクリン追加の有効性を通常治療単独と比較
研究グループは、2017年8月~2019年6月の期間に米国35施設において、40歳以上のIPF患者513例を通常治療に加えて抗菌薬を投与する群(254例)または通常治療単独群(259例)に1対1の割合で無作為に割り付け、2020年1月まで追跡調査を行った。
抗菌薬群では、ST合剤(スルファメトキサゾール800mg/トリメトプリム160mg)の1日2回投与+葉酸5mgの1日1回投与(128例)、またはドキシサイクリン投与(体重50kg未満は100mgを1日1回、50kg以上は100mgを1日2回)(126例)を行い、通常治療単独群ではプラセボは投与しなかった。
主要評価項目は、予定外の初回呼吸器関連入院または全死因死亡までの期間であった。無作為化された513例(平均年齢71歳、女性21.6%)の全例が解析に組み込まれた。
予定外の呼吸器関連入院または死亡までの期間は、通常治療+抗菌薬で延長せず
本試験は、2019年12月18日、事前に計画された初回有効性解析の結果に基づきデータ安全性モニタリング委員会により早期中止が決定した。
平均追跡期間13.1ヵ月(中央値12.7ヵ月)において、主要評価項目のイベントは合計108例で発生した。通常治療+抗菌薬群で52例(100人年当たり20.4件、95%信頼区間[CI]:14.8~25.9)、通常治療単独群で56例(18.4件、13.2~23.6)であり、両群で有意差は認められなかった(補正後ハザード比[HR]:1.04、95%CI:0.71~1.53、p=0.83)。
主要評価項目に対する事前に規定した抗菌薬の影響(ST合剤vs.ドキシサイクリン)については、統計学的な相互作用は確認されなかった(補正後HRの比較:コトリモキサゾール群1.15[95%CI:0.68~1.95]vs.ドキシサイクリン群0.82[0.46~1.47]、p=0.66)。
主な重篤な有害事象(発現率5%以上)は、通常治療+抗菌薬群vs.通常治療単独群で呼吸器系有害事象が16.5% vs.10.0%、感染症が2.8% vs.6.6%などであった。とくに注目すべき有害事象は、下痢(10.2% vs.3.1%)および発疹(6.7% vs.0%)であった。
(医学ライター 吉尾 幸恵)