心房細動のスクリーニングは、標準ケアと比較し、わずかではあるもののネットベネフィットがあり、高齢者におけるスクリーニングは安全で有益であることが示された。スウェーデン・カロリンスカ大学病院のEmma Svennberg氏らが、高齢者を対象とした心房細動スクリーニングの有用性を検証した多施設共同無作為化非盲検比較試験「STROKESTOP試験」の結果を報告した。心房細動は虚血性脳卒中の主な原因であり、心房細動の早期発見により抗凝固療法による虚血性脳卒中および死亡の減少が期待できるが、十分なエビデンスがないという。Lancet誌オンライン版2021年8月27日号掲載の報告。
75~76歳の高齢者をスクリーニング群と対照群に無作為化
研究グループは、スウェーデンのハッランドおよびストックホルムに居住している75~76歳の全住民を、心房細動のスクリーニングに招待する群(スクリーニング群)と対照群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。
スクリーニング群は、地元のスクリーニング施設を受診し、心房細動の既往歴がない参加者は携帯型心電図を用いて1日2回14日間、心電図を記録。心房細動が検出された参加者、あるいは未治療の心房細動を有する参加者には、経口抗凝固薬を用いた治療が開始された。対照群は、介入せず通常ケアのみとした。
主要評価項目は、虚血性/出血性脳卒中、全身性塞栓症、入院を要する出血および全死亡の複合エンドポイントであった。無作為化された全参加者を、最低5年間追跡し、intention-to-treat解析を行った。
スクリーニング群で対照群より有意にイベント発生率が低下
2012年3月1日~2014年5月28日の期間に、2万8,768例がスクリーニング群(1万4,387例)または対照群(1万4,381例)に無作為に割り付けられた。試験への招待前の死亡または移住により、スクリーニング群408例、対照群385例が除外となり、解析対象はそれぞれ1万3,979例および1万3,996例であった。
スクリーニング群では、1万3,979例中7,165例(51.3%)がスクリーニングを受けた。
追跡調査期間中央値6.9年(IQR:6.5~7.2)において、主要評価項目のイベント発生率は、スクリーニング群が31.9%(4,456/1万3,979例)(100年当たり5.45件、95%信頼区間[CI]:5.52~5.61)、対照群が33.0%(4,616/1万3,996例)(5.68件、5.52~5.85)であり、スクリーニング群が有意に低かった(ハザード比:0.96、95%CI:0.92~1.00、p=0.045)。
(医学ライター 吉尾 幸恵)