閉経後女性へのホルモン治療は胆嚢疾患(胆石症、胆嚢炎、胆嚢切除術)のリスクを増大することが、無作為化試験や観察研究によって明らかになっている。オックスフォード大学疫学部門のBette Liu氏らは、ホルモン剤には経皮剤と経口剤のタイプがあり、肝臓で初回通過代謝する経口剤よりも通過しない経皮剤のほうが、疾患リスクを減らすことができるのではないかと、両者の比較を行った。BMJ誌2008年7月10日号より。
イギリス・スコットランド女性100万人を対象に
Million Women Studyと名付けられたこの前向きコホート研究は、イングランドとスコットランドの国民健康保険(NHS)に登録された女性を対象とする。
NHSブレストスクリーニングセンターを利用した100万1,391例の閉経後女性(平均年齢56歳)が集められ、1996年から2001年の間に、胆嚢疾患によるNHS入院データが生じたかどうか追跡調査された。
主要評価項目は、ホルモン治療が行われ胆嚢疾患・切除術のために入院に至った相対リスクと標準入院率。
胆嚢疾患リスクは経皮剤1.17 vs. 経口剤1.74
胆嚢疾患による入院が確認されたのは1万9,889例。そのうち1万7,190(86%)が胆嚢切除術を受けていた。
ホルモン治療未受療者と比べて治療中の者のほうが、胆嚢疾患になる可能性が高かったが(相対リスク1.64、95%信頼区間:1.58~1.69)、その相対リスクは経口剤受療者が1.74(1.68~1.80)、経皮剤受療者が1.17(1.10~1.24)で、経皮剤受療者のほうが低かった(P<0.001)。
経口剤受療者のうち、ウマエストロゲン(1.79、1.72~1.87)のほうがエストラジオール(1.62、1.54~1.70)よりも若干リスクが高かった(P<0.001)。またそれぞれ、低用量よりも高用量を用いた場合のほうがリスクは増大した。ウマエストロゲンで、>0.625mg:1.91(1.78~2.04)vs. ≦0.625mg:1.76(1.68~1.84)、P=0.02。エストラジオールで、>1mg:1.68(1.59~1.77)vs. ≦1mg:1.44(1.31~1.59)、P=0.003。
治療を中止すると、時間とともにリスクは減少する(P=0.004)。
アウトカムとして胆嚢摘出術に至った点に差異はなかった。
5年間での標準入院率(/100人)は、未治療者で1.1、経皮剤受療者で1.3、経口剤受療者は2.0。
Liu氏は、「胆嚢疾患は閉経後女性でよく見られる疾患であり、ホルモン治療を受けるとリスクは増大する。経口剤ではなく経皮剤で治療を行うことで、140人に1人が胆嚢摘出術を回避することができるだろう」と結論している。