中国人のCYP2C19機能喪失型対立遺伝子を有する軽度虚血性脳卒中/一過性脳虚血発作(TIA)患者において、90日時点の脳卒中再発リスクは、クロピドグレルと比較しチカグレロルがわずかに低かった。また、中等度~重度出血リスクは両群間に差はなかったものの、すべての出血イベントはクロピドグレルと比較してチカグレロルで増加した。中国・首都医科大学のYongjun Wang氏らが、中国の202施設で実施した無作為化二重盲検プラセボ対照試験「CHANCE-2試験」の結果を報告した。これまで、CYP2C19機能喪失型対立遺伝子保有者の脳卒中再発予防に関して、チカグレロルとクロピドグレルを比較した研究はほとんど実施されていなかった。NEJM誌オンライン版2021年10月28日号掲載の報告。
6,412例を対象に、アスピリンへのチカグレロル併用とクロピドグレル併用を比較
研究グループは、
CYP2C19機能喪失型対立遺伝子を有する40歳以上の軽度虚血性脳卒中/TIA患者(NIHSS≦3、ABCD
2スコア≧4)を、発症後24時間以内にチカグレロル群(チカグレロルを1日目に180mg、2~90日目に90mg 1日2回、およびクロピドグレルのプラセボ)、またはクロピドグレル群(クロピドグレルを1日目に300mg、2~90日目に75mg 1日1回、およびチカグレロルのプラセボ)に、1対1の割合で無作為に割り付け、両群ともアスピリンを21日間併用投与した。
有効性の主要評価項目は、90日時点の新規虚血性または出血性脳卒中、副次評価項目は、30日以内の新規脳卒中、血管イベント(脳卒中、TIA、心筋梗塞、血管死の複合)など。安全性の主要評価項目は90日以内の中等度~重度出血とした。
2019年9月23日~2021年3月22日の間に計1万1,255例がスクリーニングされ、6,412例が割り付けられた(チカグレロル群3,205例、クロピドグレル群3,207例)。患者の年齢中央値は64.8歳、女性が33.8%、98.0%が漢民族であった。
90日以内の脳卒中発症は、チカグレロル群6.0%、クロピドグレル群7.6%
90日以内の脳卒中発症は、チカグレロル群で191例(6.0%)、クロピドグレル群で243例(7.6%)確認された(ハザード比[HR]:0.77、95%信頼区間[CI]:0.64~0.94、p=0.008)。副次評価項目も概して主要評価項目と同じ結果であった。
中等度~重度出血は、チカグレロル群で9例(0.3%)、クロピドグレル群で11例(0.3%)に認められ、すべての出血はそれぞれ170例(5.3%)、80例(2.5%)に発現した。
なお、著者は、対象患者の98%が漢民族であり一般化できないこと、漢民族はアジア以外の民族に比べて頭蓋内動脈狭窄の発生率が高く、漢民族以外の患者ではチカグレロルとクロピドグレルの効果が異なる可能性があること、心原性脳塞栓症や中等度~重度脳卒中、血栓溶解療法や血栓除去術を受けた患者等が除外されていること、などを研究の限界として挙げている。
(医学ライター 吉尾 幸恵)