Stage IAの非小細胞肺がん(NSCLC)に対し、区域切除は肺葉切除と比べて5年全生存(OS)について優越性が示され、事前に規定した全サブグループでも、区域切除の同優越性が一貫して認められた。聖マリアンナ医科大学呼吸器外科主任教授の佐治 久氏らが、日本国内70ヵ所の医療機関を通じて行った「JCOG0802/WJOG4607L試験」の結果を報告した。著者は、「本試験は、われわれの知る限りでは、肺野型NSCLCの全生存について、区域切除と肺葉切除のベネフィットを比較検討した初の試験で、結果は、区域切除を肺野型NSCLC患者の標準外科治療とすべきことを示唆するものであった」と述べている。Lancet誌2022年4月23日号掲載の報告。
日本国内70ヵ所の医療機関で無作為化試験
第III相の非盲検無作為化対照非劣性試験「JCOG0802/WJOG4607L試験」は、日本国内70ヵ所の医療機関を通じて行われ、臨床Stage IAのNSCLC(腫瘍径≦2cm、C/T比>0.5)の患者を無作為に2群に分け、一方には肺葉切除を、もう一方には区域切除を行った。無作為化は最小化法で、試験センター、組織型、性別、年齢、薄切CT所見のバランスを考慮した。治療割付について、被験者と試験担当者へのマスキングは行われなかった。
主要エンドポイントはOS(全無作為化患者を対象に解析)、副次エンドポイントは術後呼吸機能(6ヵ月、12ヵ月)、無再発生存、局所再発の割合、有害事象、区域切除完了の割合、入院期間、胸腔チューブ留置期間、手術期間、失血量、自動外科用ステープル使用数だった。
OSはITT解析を行い、非劣性マージンはハザード比(HR)の95%信頼区間(CI)上限値1.54に設定し、層別化Cox回帰モデルを用いて算出し検証した。
5年OS率、区域切除群94%、肺葉切除群91%
2009年8月10日~2014年10月21日に、被験者数1,106例(ITT集団)が登録され、肺葉切除群は554例、区域切除群は552例だった。両群患者のベースラインの臨床病理はバランスがとれていた。なお、区域切除群のうち、22例が肺葉切除に切り替えられ、1例が拡大区域切除を受けた。
追跡期間中央値7.3年(範囲:0.0~10.9)で、5年OS率は区域切除群が94.3%(95%CI
:92.1~96.0)、肺葉切除群は91.1%(88.4~93.2)で、区域切除群の非劣性と優越性が確認された(HR:0.663、95%CI:0.474~0.927、非劣性片側p<0.0001、優越性p=0.0082)。事前に規定した全サブグループで、区域切除術群で全生存率がより良好だった。また、区域切除群のすべての事前規定サブグループで、OSの改善が一貫して観察された。
術後1年の呼吸機能をみたFEV1の減少率中央値は、区域切除群12.0%、肺葉切除群8.5%で有意差がみられたが(群間差:3.5%、p<0.0001)、事前に設定した閾値(10%)には達しなかった。5年無再発生存率は、区域切除群88.0%(95%CI:85.0~90.4)、肺葉切除群87.9%(84.8~90.3)で同等だった(HR:0.998、95%CI:0.753~1.323、p=0.9889)。局所再発率は、区域切除群10.5%、肺葉切除群5.4%と区域切除群で有意に高率だった(p=0.0018)。
区域切除群27/58例(47%)、肺葉切除群52/83例(63%)が、それぞれ術後に他の疾患で死亡した。30日または90日死亡率は観察されていない。
1つ以上のGrade2以上の術後合併症発生率は、区域切除群148例(27%)、肺葉切除群142例(26%)で同程度だった。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)